サンクコスト効果とは?ビジネス・事業開発における具体例と回避方法

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「買って数回しか着ていない服をずっと捨てられない」
「一度収集しはじめたらコンプリートするまでやめられない」

このような経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか?

どう考えても非合理的であるのにやめられない、続けてしまう・・・。

これはサンクコスト効果と呼ばれる心理が働くためです。

ビジネスにおいてもサンクコスト効果によって誤った判断を下してしまうケースがあります。

この記事では、ビジネスシーンにおけるサンクコスト効果の事例を学んでいきましょう。

サンクコストとは?

サンクコストとは?

「サンクコスト(sunk cost)」とは、日本語で「埋没費用」や「過去コスト」と呼ばれる将来的に回収できる見込みのないコストのことをいいます。

例えば、服を購入したお金、サブスクで支払ったお金、ゲームに課金したお金など、すでに支払ったお金はサンクコストに当たります。

また、お金に限らず費やした時間や労力もサンクコストになります。

サンクコスト効果とは?

「サンクコスト効果」とは、回収見込みのないサンクコストを回収しようとして非合理的な判断・行動をしてしまう心理効果のことをいいます。

例えば、新規事業に3000万円の投資を行い1年間継続してきたものの、黒字化の見通しも立たない。

ここで合理的な判断ができれば即時撤退して3000万円の損失で終わる。しかし、投資した3000万円が惜しくてなんとか回収しようと、事業継続を決断し、さらに損失を広げてしまう。

この合理的な判断ができなくなってしまう状態がサンクコスト効果です。

コンコルド効果との違い

サンクコスト効果とほぼ同じ意味で用いられているのが「コンコルド効果」です。

名称の由来は、かつて英仏で共同開発された超音速旅客機コンコルドからきています。

コンコルドは開発途中でこのまま開発を続けても投資した費用の回収が難しいということが判明したにもかかわらず、開発が続けられました。

最終的に開発中止になったときには巨額の損失を抱えることになりました。

この事象を「コンコルド効果」と呼び、サンクコスト効果とほぼ同義です。

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サンクコスト効果の例

サンクコスト効果の例

私たちは生活の中でサンクコスト効果を利用した様々なマーケティング手法に触れています。それらの例を少しご紹介します。

年間サブスクリプション

サブスクと言われる継続課金制度は、そのいずれのサービスにおいてもサンクコスト効果が強く働きやすい施策といえます。

例えば年間契約において、一月当たりの費用は割安にして加入のハードルを下げ、契約途中でユーザーがサービスを利用しなくなった場合でも、「せっかく1年契約したのでもったいないから利用し続けよう」という心理を刺激し、解約率の低下を促せます。

無料トライアル

「初月無料」や「契約から3ヶ月間は割引価格」といったプランもまた、サンクコスト効果によるリピーター獲得手段のひとつといえます。

無料体験というお得感をユーザーに覚えてもらうことで、「このメリットを失うのはもったいない」という印象を与えることで正規契約へと導く手法です。

会員ランクの付与

会員ランクの付与やそれに付属した特典付与もサンクコストの心理効果のひとつです。

例えば会員ランクによって還元ポイントが増加するといった特典がある場合、「今月あと〇円で上級会員になって還元率が上がる」というシステムは「使わないともったいない」という心理効果の表れです。

続いては、経営する側、ビジネスを行う側の視点に立ったサンクコストの例を説明します。

ビジネスにおける3つのサンクコストの例(パターン)

ビジネスにおける3つのサンクコストの例(パターン)

事業をすすめていく上で把握しておくべき、サンクコストのパターンを3つ紹介します。

マーケティングにおけるサンクコスト

あらゆる企業は例外なく製品やサービスを販売しており、見方によってはマーケティングに関わる費用やコストはサンクコストの好例ともいえ、代表的なものとしてやり玉にあがりやすいのが広告費用です。

新製品やサービスを開発した際、その商品を消費者に認知してもらうため、マーケティング、広告費用として1000万円を投下したとします。

分析の結果、残念ながらマーケティンや広告には効果が見られないという結果になりました。

しかし、投下した1000万円の費用の支払いは発生していますから、取り戻すことはできません。

この1000万円はサンクコストということになります。

しかしながら、広告は続けることでターゲットユーザーの認知を獲得することができ、コストを継続的にかけていることや打ち出しているメッセージが信頼につながるという観点もあるため、ROIがすぐに出ないからといってサンクコストと捉えることは避けるべきです。

筆者が以前在籍していたマクドナルドは広告に多額の費用を使っており、キャンペーンのみならず、病気の方の家族が滞在できるドナルド・マクドナルド・ハウスや素材の良さを宣伝するためのブランド広告などにもコストをかけていました。

これらは効果がすぐにわかるものではなく、自分たちが社会においてどういう存在であるか、また広告を打つ目的も消費者の皆さまに理解していただくだけでなく、クルーやパートナー企業、社員に応援してもらえる存在になるという側面もあるかと思います。

そのような場合、サンクコストと捉えることもできますが、自分たちのブランドを構築するための投資と見ることもできるのではないでしょうか。

社内研修・教育におけるサンクコスト

従業員向けの研修や教育もサンクコストとみられる典型的なパターンです。

これらは効果の算定が難しく、表層的な研修や教育を行っている場合は確かにサンクコストになりがちです。

例えば、社内で新たなシステムを導入することが決まり、それを活用するスタッフの研修を行うとします。大企業ともなるとスタッフも多くなり、その費用は数百~数千万円に上ることも珍しくありません。

しかし、そのソフトウエアが期待するほどのものではなく、新たに別のソフトウエアの導入を検討することになったとします。

当然、再度新しいソフトウエアの研修が必要になり、最初に研修に使った費用の回収はできないためサンクコストになります。

また、社内の座学的な研修やe-learningもサンクコストと捉えられがちです。

事業・製品開発におけるサンクコスト

多額の費用を投下して新規事業を立ち上げた場合、たとえ計画通りの成果が得られなかったとしても、今までに投じた費用が頭をよぎり、あとに引けなくなります。

スパッと撤退できず損失はさらに増していくことも少なくありません。

この状態は、資金的に余裕のある大企業に見られがちです。

例えば、ある企業が莫大な費用をかけて入念な市場調などの万全の準備を行ったあと、新規参入したとします。

ところがその事業は2年続けて赤字を出し、事業の進退を決定しなければならなくなりました。

会社としては「参入時に莫大な資金を投下しているため、回収できるまで事業を継続したい」と考えてしまいがちです。

しかし、すでに投下したコストはサンクコストです。

新規事業開発における注意点

新規事業開発における注意点

大企業の新規事業開発では、多くの時間やお金などのリソースを投下しますから、事業がうまくいかず損失が膨らんでも引くに引けない状態になりがちです。

どれだけのリターンが得られるかを見通しやすい既存事業と違って、新規事業は先を正しく見通すことは難しいため、成功する確率も高くありません。

ですから、事業がうまくいかなかったときにサンクコスト効果によってさらなる損失を生み出さないためにも、新規事業の事業計画の段階で撤退の要件を決めておくことです。

その撤退の要件を満たしたら無条件に撤退すれば、投資金額に後ろ髪を引かれ、ずるずると事業継続するといった誤った判断をしてしまうこともなくなります。

サンクコスト効果を回避し合理的な判断をする方法

サンクコスト効果を回避し合理的な判断をする方法

最後にビジネスシーンで欠かせないサンクコスト効果の回避方法とそのポイントをご紹介します。

サンクコスト効果に囚われている自分を自覚する

新期事業立案時でも事業進行中でもかまいません。

「ここで止めたらもったいない」「せっかくここまでがんばったのだから」と思ってしまったら、自分はサンクコストに囚われていると思いましょう。

まず冷静に判断できる状態を保つことです。それには俯瞰して自分自身を見れるようになることが重要です。

コストをゼロベースで考える

サンクコスト効果を回避するためには、ゼロベースで考えることです。

すでに投資した金額のことは忘れ、現時点から先のことを考え、続けるべきか、やめるべきかを判断するようにします。

新規事業でも現事業であっても漫然と続けている業務や利用しているサービスがないかを定期的に見直し、無駄だと思われることはやめていくべきでしょう。

筆者としては家庭における断捨離と似たように考えると良いと思います。

時には思い切ってやめてみて、やはり必要であれば戻せばよいと考えると判断を行いやすかったりします。

投資金額の上限を決めておく

投資費用の上限に予め線引きをしておくという考え方です。

サンクコストに囚われてしまうと、際限なく投資を続けてしまいます。

コンコルド旅客機の開発がその例です。あえてサンクコストを意識して上限を決め、事業を諦める・撤退するタイミングを図ります。

企業によっては事業計画に撤退要件を必ず入れることが求められるところもあります。

まとめ

新規事業の成功率は高くありません。

ある意味、新規事業に積極的に取り組む企業には撤退スキルがあるかどうかが重要とも言えるかもしれません。

撤退する場合、そのすべてがサンクコストではないということも念頭にしてください。

あくまでかえってこないコストがサンクコストです。

つまり、撤退する事業には転用できる資産もあります。

あの「コンコルド旅客機の開発」において、「コンコルドは去ったがエアバスは躍進した」といわれるように、コンコルドで培った技術がその後のエアバスの成功に活かされ、つながっています。

サンクコストへのしっかりした理解、つまり最適なタイミングで「戦略的撤退」ができる仕組みをあらかじめ用意しておくことで企業経営への致命傷を回避できます。

また、新規事業に失敗しても、そこで得た経験で、また新たなチャレンジができるレジリエンスの高い組織づくりが可能になります。

新規事業の立案時点でも進行中であってでもこのサンクコストのジレンマに陥っている企業様、担当スタッフの方がおられましたら、是非弊社までご相談ください。

サンクコスト効果やその後のソリューションについても経験豊かなスタッフを揃えてお待ちしております。

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執筆者紹介

河上 祐毅

ムーンプライド 取締役

アクセンチュアの戦略グループで通信・メーカー・メディア企業を中心に支援、クライアントチームへ転部を経て10年間在籍の後にマクドナルドにてプロモーション効果分析や消費者調査を担当。ムーンプライドではヘルスケア・通信・ハイテクメーカーを中心にDX営業、新規事業立ち上げ、デジタルマーケティング領域で支援を実施。

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