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競争優位性とは、自社が競合他社よりも有利なポジションにいることを意味します。
そんな競争優位性を築き高めるためには、どんな戦略をとるべきでしょうか。
よく知られる「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」の3つの手法について解説します。
また具体的な企業の事例を紹介しながら、競争優位性を分析するフレームワークについて解説します。
競争優位性とは?
「競争優位性」とは、ある企業が行っているビジネスについて、競合他社や新規参入している事業者よりも優位なポジションや状況にいることを意味します。
企業がビジネスを行っていく際、市場の中で優位なポジションにつき、そのような状況を確立していくことはとても重要です。
近年、あらゆる市場が飽和状態になっている傾向があり、そのような市場に参入すると価格競争に巻き込まれてしまうことも考えられます。
しかし競合他社よりも有利な立場にいれば、ビジネスで成功をおさめやすくなります。
例えば独自の原材料入手ルートを持ち、競合他社はなかなか手に入らない商品を販売している企業や、大量生産によって低コストを実現できた企業などは、競争優位性があるといえるでしょう。
しかし、競争優位性を長い期間保つのは簡単にできることではありません。
市場も消費者の動向も時代とともに変化していきます。
それらの変化に柔軟に対応していくことが、競争優位性を維持するポイントのひとつです。
【関連記事】競合調査とは?やり方・手順とおすすめフレームワークを紹介
競争優位性を築く・高めるための戦略
競争優位性を築くことの重要性について理解した上で、どのように競争優位性を築き、高めていけばいいでしょうか?
ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱した、基本的な3つの戦略をご紹介します。
コストリーダーシップ戦略
1つ目が「コストリーダーシップ戦略」です。
これは、商品にかかるコストを競合他社よりも低くして優位性を築く戦略です。
例えば商品の原価が低くなれば、それだけ多くの利益を得ることができる上、商品を競合他社よりも安く販売することもでき、売上拡大にもつながりやすくなるでしょう。
それによって、企業の利益拡大が期待できます。
ただしコストリーダーシップ戦略をとれる企業には、いくつかの特徴があります。
それは生産規模が大きく、技術などの優位性があることです。
生産規模が大きいほどコストを低くしやすく、工場や設備などの固定費の効率化もできるでしょう。
また自社に優れた技術があれば、その技術を他社の力などに頼ることなく自社で賄えるため、コスト削減につながります。
差別化戦略
2つ目は「差別化戦略」です。
これは競合他社の商品やサービス、ブランドに比べて違いを作り、それらと差別化して優位性を確保しようとする戦略です。
他社の商品やサービスにはない「自社だけの特徴」があれば、市場の中でひときわ輝きます。消費者には「魅力的」と映り、商品やサービスの売上が伸びると考えられます。
現代はインターネットやSNSの普及によって、人々の好みや需要はますます多様化しています。
そんななか、他社にはない自社ならではの特徴があれば、その部分を強化して競争優位性を確立できるでしょう。
この差別化戦略は、独自の世界観などを確立したブランドがとりやすい戦略で、幅広くさまざまな企業に向いている方法といえます。
集中戦略
3つ目は「集中戦略」で、「ニッチ戦略」や「特化型戦略」などとも呼ばれます。
集中戦略とは、特定の顧客層やエリア、さらに流通チャネルなどに集中して経営資源を投じる戦略です。
例えば特定の地域に限定して商品やサービスを展開することで、その地域で競合他社を抜いてナンバーワンの地位を確立できるかもしれません。
そのため大企業はもちろん、中小企業も幅広く行えるのがこの戦略の特徴です。
まだ競合他社が参入していないニッチな市場を見つけて、そこに参入して優位なポジションに立つことも考えられます。
しかし集中戦略では一部の市場で競争優位性を確立できたとしても、大手企業が参入するなど何らかのきっかけがあると、一気に顧客が奪われる可能性もあります。
また環境の変化によって、左右されやすいというデメリットもあります。
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競争優位性を分析するフレームワーク
市場の中で自社の商品やサービスが競争優位性を獲得するためには、その市場における分析も大切です。
競争優位性のためによく利用される分析方法として、VRIO分析とファイブフォース分析という2つの方法が知られています。
VRIO分析
VRIO分析とは、以下の4項目から自社の経営資源を評価・分析するフレームワークです。
「VRIO」は、この4つの単語の頭文字からつけられています。
- 経済的価値(Value):自社の商品やサービスに、消費者がどのくらいお金を支払う経済的価値があるか評価します
- 希少性(Rareness):自社の商品やサービスに、競合他社と比べてどのくらい希少性があるのか評価します
- 模倣可能性(Imitability):自社の商品やサービスが、競合他社にとって模倣しやすいかどうか評価します
- 組織(Organization):自社の経営資源を十分に活用できる組織体制ができているか評価します
このVRIO分析を行うことで、自社の強みや弱点をきちんと把握し、どの部分を競合他社に差別化できるか理解し、その差別化ポイントを伸ばしやすくなります。
また経営資源を明確化することも可能になります。
ファイブフォース分析
もうひとつのフレームワークが、ファイブフォース分析と呼ばれる手法です。
これは自社の商品やサービスが市場のなかで、どんな状況におかれているか分析する方法です。
「フォース」とは英語で「脅威」の意味で、具体的には次の5つの脅威について分析します。
- 既存の競合他社の脅威:すでに市場に存在する競合他社が、どんな製品やサービスを提供しているのか、市場でどのくらいのシェアを占めているのか等を分析します。
- 買い手(顧客)の交渉力:買い手(顧客や消費者)と自社とのバランスについて分析します。
市場に競合他社が多く、多くの商品が供給されていれば、価格が下がる傾向になり自社の収益は低下することが考えられます。 - 売り手(サプライヤー)の交渉力:売り手(サプライヤー)と自社とのバランスについて分析します。
メーカーなら原材料を仕入れるサプライヤー、販売会社なら卸しを行う企業を指し、自社との力関係について考えます。 - 新規で参入する企業の脅威:市場にはいつ新しい企業が参入してくるかわかりません。
そのような脅威に備えて、常に市場の変化を注視して分析することが必要です。 - 代替品の脅威:自社の商品やサービスに代替品が存在する場合、代替品にはない差別化できるポイントがあるのか、改善ポイントがあるかといったことを分析します。
ファイブフォース分析は自社を取り巻く業界の状況を正しく把握して、自社の強みや課題を見つけ、収益性を向上できます。
自社の強みを把握して、現在ある脅威にどのように対処していけばいいか、さらに今後起こり得る脅威についても、あらかじめ察知しやすくなり、すぐに対応していくこともできるでしょう。
競争優位性の企業事例
では具体的に、競争優位性を獲得して成功している企業の事例を見てみましょう。
実例①ニトリ
家具やインテリア製品を取り扱うニトリは、インテリア業界で不動の地位を確立し、日本全国に店舗を展開しています。
ニトリの強みは、製造物流小売(SPA)モデルを採用し、自社で企画、製造、販売までを一貫して行っていることです。
「お、ねだん以上、ニトリ」のキャッチコピーが示すように、低価格でありながら、デザイン性や機能性の高い商品を展開しているのです。
また同社は、利益率がとても高いことでも知られています。
これは原材料の仕入れや輸入、生産なども一貫して行っていることが大きいでしょう。
インテリア業界では、スウェーデン発の家具メーカーであるIKEAが競合にいますが、IEKAは顧客が自分で家具を組み立てるセルフサービスが基本となっており、ニトリとコンセプトが異なります。
コスト面を徹底的に抑える生産体制を築き、それによって他社にはないブランドへの信頼感を醸成しているのが、ニトリの成功した要因といえるでしょう。
実例②ユニクロ
ニトリと同様に、コスト面での戦略を取って競争優位性を確立したのがユニクロです。
ユニクロも「SPA化」と呼ばれる、企画から製造、販売までを一貫して自社で行うビジネスモデルを採用しています。
高品質なのに、競合他社に比べて圧倒的に価格面で優れた商品を提供し、飛躍的に成長してきました。
これまでも低価格を打ち出したファッションブランドは多数ありましたが、ユニクロの強みは品質の良さです。
卸や商社などの中間マージンを排除することで、余分なコストをカットしています。
ファッション性や機能性もあるカジュアルウェアを低コストで提供することを実現しているのです。
また「ヒートテック」や「ブラトップ」など、消費者の「こんな商品があったらいいな」と思うものを形にして投入し、新たな需要も掘り起こしてきた革新性もあります。
実例③スターバックス
コーヒーショップとして絶大な人気を誇るスターバックスは、アメリカから日本に上陸して、世界中に店舗を増やし続けています。
他にも、コーヒーショップチェーン店は数多くあります。
スターバックスの商品価格はライバル店よりも高い場合が多いですが、それでも店舗数を着実に増やして事業を拡大できているのは、「サードプレイス」という理念があることが大きいでしょう。
サードプレイスとは、自宅でも職場でもなく、自分らしく過ごせてくつろげる「第三の場所」という意味です。
そんなコンセプトを店内のインテリアや雰囲気で演出し、「せっかくならスターバックスに行きたい」と思わせるブランディングを確立しているのです。
コーヒーを飲みながら仕事するビジネスマンに対応して、スターバックスでは、今では当たり前になったWi-fiやコンセントを早くから完備してきました。
「おしゃれで高級感もあり、気持ちよくそこでの時間を過ごせる」と、多くの人から支持されています。
実例④ルイ・ヴィトン
ルイ・ヴィトンといえば、一流のラグジュアリーブランドとして世界で認識されています。
ルイ・ヴィトンが現在の地位を確固たるものにできたのは、希少性の高い演出を続けて競合優位性を高めたことがあるでしょう。
ニトリやユニクロが行ったコストリーダーシップ戦略とは異なり、ルイ・ヴィトンは他社にはない違いを武器に、幅広い顧客を取り込んでいく差別化戦略をとっています。
正規店でしか販売せず、セールは行わず、さらに生産量を限定することで「持っていることがステータス」という希少性を顧客に持たせ、ブランディングを図ってきました。
もともと価格では勝負していないため、利益率が下がるようなことはなく、高級路線で商品を展開し収益も確実にしてきています。
実例⑤セリア
100円ショップのセリアは、高い利益率を出す企業として注目されています。
同社がとったのは、差別化戦略です。
同じように100円ショップの競合が存在するなか、セリアではSNSによく映える商品開発に注力して、他社との差別化を図っています。
写真映えする商品が数多くあれば、それらがSNSでシェアされて広く拡散されていくことが期待できるのです。
そのため、写真映えする商品やコレクターに好まれるグッズを次々に展開し、季節のイベントなどにあわせてさまざまな商品を販売してきました。
また競合ショップでは100円以外の商品も販売しているのに対し、セリアではすべて100円の商品に統一しており、わかりやすく低下価格であることも魅力となっています。
事業開発・成長において競争優位性は必ず必要
競争優位性が高いと、ビジネスがうまくいきやすいということがおわかりいただけたでしょう。
逆に競争優位性が低ければ、そのビジネスを成功させるのは難しいということです。
つまりビジネスの成功には、自社の商品やサービスの強みについてきちんと把握し、市場におけるポジションを理解して、競争優位性を高めていくことが必要不可欠なのです。
もし自社の商品やサービスに強いアピールポイントがないのなら、現在持っている弱みが逆に強みになる可能性もあります。
競合他社にはない特徴を持っているか、よく分析するといいでしょう。
競争優位性を高めて優位なポジションの確立を
競争優位性とは、市場において自社の商品やサービスが競合他社と比べて優位であることを表す言葉です。
例えばコスト面で競合他社より優れ、圧倒的に低価格の商品を安定的に供給できていれば、競争優位性があるといえます。
また競合他社とは差別化を図り、自社ならではの強みを伸ばして、競争優位性を高める戦略もあります。
さらに市場の中でも特定の顧客やセグメントに集中する集中戦略という手法もあります。
ご紹介した企業の例のように、競争優位性を確立していくためには、自社の商品やサービスの現状と市場における現在のポジションをしっかり把握することが大切です。
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現在ある課題に対して、どんな解決策があるか一緒に考えていきましょう。