カニバリゼーションとは?回避する方法と活用できた企業実例を紹介

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カニバリゼーションは、自社の新規事業やサービス内容が市場内で共食いし、シェアを取り合っている状態を指します。

カニバリゼーションを起こし、市場でのシェアを大幅に減らした企業や企業全体の収益にも影響を及ぼした事例もあります。

今回は、カニバリゼーションについて、戦略的な側面と活用事例、発生を防ぐ対策などを徹底解説します。

新規事業の検討時や経営戦略を考える上でぜひ参考にしてください。

カニバリゼーションとは?

カニバリゼーションとは?

カニバリゼーションとは、自社で提供する商品・サービスが同じ市場内で競合し、お互いにシェアを取り合う状態のことを指すマーケティング用語です。

日本語では「共食い」という意味があり、ビジネス現場では「カニバる」といわれることがあります。

よくあるカニバリゼーションの例は、飲食店やコンビニのチェーン店が、事業拡大で同じエリア内に店舗を出した結果、お互いに顧客を取り合う状態になってしまうパターンです。

この例からもわかる通り、カニバリゼーションは新規にサービスを展開する際に、既存事業と顧客層や市場が被ってしまい、ターゲットの差別化ができずにお互いに足を引っ張り合う点が問題です。

そのため、カニバリゼーションを避けるには、企業側も機能面やターゲット、コスト面で既存事業との差別化を図ることが重要な対策になります。

カニバリゼーションが事業にもたらすデメリット

カニバリゼーションが事業にもたらすデメリットを説明した画像

カニバリゼーションが起こってしまうと、企業にとってはデメリットになります。

カニバリゼーションがもたらすデメリットは、具体的にすると次の3点です。

  • 既存事業の売上減少
  • 競合他社にシェアを奪われる
  • コストの増大

それぞれのデメリットについて、詳しくご紹介します。

既存事業の売上減少

カニバリゼーションが発生すると、似た性質・機能を持つ新規事業に既存事業の顧客が奪われ、結果として既存事業の売上が減少します。

新規事業の収益性が一定の成果を収めたとしても、既存事業の収益性がマイナスになれば、全体の収益は減少に転じる可能性があります。

競合他社にシェアを奪われる

カニバリゼーションで事業収益が減少するだけでなく、競合他社にシェアを奪われるリスクもあります。

顧客にとっては、新規事業が既存事業と大差なければ、あえて同じものを選ぶ必要がないと感じます。

また自社内でシェアを奪い合った結果、社員の創造力や競争力低下につながる懸念もあります。

そのため、機能性に違いがないのであれば、より良い物を開発している競合他社の事業に流れる可能性が高いです。

コストの増大

自社内でサービス・製品が競合してしまうと、それまでの開発コストが無駄になってしまいます。

さらに既存事業と新規事業が顧客を奪い合って売上が減少すれば、開発コストの回収も難しくなるでしょう。

そして、増大したコストを回収するためにコストを製品の価格に転嫁すれば、さらに売上が落ちるという悪循環に陥ります。

カニバリゼーションはコストばかりが増大し、メリットとなる部分がありません。

ドミナント戦略との関係性

カニバリゼーションと深く関係するマーケティング戦略として「ドミナント戦略」があります。

ドミナント戦略とは飲食や小売のチェーン店でよく行われる方法で、収益を見込める特定の地域に集中的に店舗展開するものです。

エリア一帯でのシェアを獲得し、競合他社より優位な立場になる戦略の1つですが、カニバリゼーションが起こりやすい経営戦略でもあります。

ドミナント戦略をよく行っている代表例としては、大手コンビニチェーンのセブンイレブン、カフェチェーンのスターバックスなどです。

ドミナント戦略は戦略の性質上、カニバリゼーションが起こってしまうため、対策を行わなければ収益性が高められない諸刃の剣でもあります。

そのため、ドミナント戦略を行う企業は、カニバリゼーションへの対策も用意しなければなりません。

 

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新規事業開発におけるカニバリゼーションの考え方

新規事業開発におけるカニバリゼーションの考え方を説明した画像

新規事業開発を進める時、同一業界・同一分野でサービスや製品を開発すれば、どうしてもカニバリゼーションを避けられないケースがあります。

企業が戦略としてカニバリゼーションを起こす場合、経営戦略上のメリットが上回っているかどうかの判断が重要です。

カニバリゼーションが起こると、事業全体の売上が減少しやすいというデメリットがある反面、少なからずメリットもあります。

例えば業界内での自社のシェアを拡大し、盤石にするという点が1つのメリットです。

自社のサービス・製品が業界内でシェアを独占していれば、カニバリゼーションによるデメリットもほとんど影響しません。

またシェアの拡大によって、自社内で競争を促し、開発競争を加速させる効果も期待できます。

新規事業開発においてカニバリゼーションを起こす場合、経営者はメリットとデメリットのバランスを考慮することを意識すべきです。

カニバリゼーションを回避する方法

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カニバリゼーションを回避するために、企業が新規事業開発を行う際に注意すべき点はどこでしょうか。具体的な回避方法についてご紹介します。

方法①既存事業との差別化

カニバリゼーションが起こる原因は、既存事業と新規事業の内容が類似し、お互いに顧客を奪い合うことです。

わかりやすい例としては、ビールを販売していた事業者が、発泡酒を開発・販売した結果、ビールの売上が減少してしまったケースがあります。

ビールと発泡酒では、名称と製法の違いこそあれど、顧客からすればどちらもほぼ同じものであり、どちらを選んでも変わりありません。

この例のように、カニバリゼーションを回避するためには、自社の既存事業を踏まえたうえで、差別化した新製品を開発することが重要です。

方法②ターゲット設定の明確化

カニバリゼーションを回避するには、類似した製品であっても、ターゲット設定を明確化し、製品によってメインユーザーを変えることも重要です。

例えば化粧水を販売した場合、既存製品は女性をターゲットにしていたため、新規事業では男性向けの化粧水を販売すれば、カニバリゼーションを避けられます。

さらに男性の中でも20代向けや40代向けなど、年齢層やカテゴリーを細かく分けていけば、製品も販売戦略も変わります。

既存事業がどのターゲットにアプローチしているのか、新規事業のターゲットにするならどの層を狙っていくのかなどを考えれば、カニバリゼーションは避けやすくなるでしょう。

方法③企業での情報共有

各業界のシェア上位を占める大企業では、複数の部署が並行して新規事業やサービスを開発していくことも多いです。

しかし同じ社内・同じ業界で開発を進める以上、別部署で似たような製品を開発していることも珍しくありません。

開発にはコストが発生する以上、完成した製品は店舗等で販売されることになり、結果としてカニバリゼーションが発生するリスクが高まります。

そのためカニバリゼーションを避けるには、企業内での情報共有を緊密に行い、各部署やチーム間でターゲット設定や機能性を差別化していくことが重要です。

そして、カニバリゼーションを起こしそうな状況が発生した時も、他部署と連携して解決策を講じましょう。

カニバリゼーションを活用する方法

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次に、カニバリゼーションを企業の戦略として活用する方法についてもご紹介します。

方法①自社の業界シェアを強化する

カニバリゼーションには、自社内でシェアが競合するだけでなく、業界でのシェアを強化するという活用方法もあります。

有名な例は、自動車メーカーのハイグレード車種とそれ以外の車種です。

ハイグレード車種しか販売していない企業があるとして、そのままではミドルグレード以下の車種では業界内のシェアを奪われてしまいます。

また、ハイグレード車種だけでは購入できる顧客も限られるため、いずれは事業としても頭打ちになるでしょう。

そこで同じ自動車でもミドルグレード以下の大衆車やファミリーカー、軽自動車なども販売すれば、自動車業界内における自社のシェアを強化できます。

カニバリゼーションのすべてが悪いわけではなく、戦略的カニバリゼーションなら企業の売上も向上できます。

方法②競合他社とカニバリゼーションを起こしてシェアを拡大する

あえて競合他社が参入した業界・市場に参入し、シェアを拡大する戦略的カニバリゼーションも可能です。

ブルーオーシャンの市場を見つけ、すでに参入している競合他社が収益を上げているなら、カニバリゼーションを起こしても一定の収益が期待できます。

また、競合他社は新規参入した企業の存在を警戒する傾向があるため、事業拡大に慎重になるケースも想定できます。

競合他社の製品・サービスと差別化したうえで、同等以上の機能性を持つことが条件になりますが、リスクを冒さずに新規事業開発をできる優れたマーケティング手法です。

方法③自社内の競争に利用する

カニバリゼーションを利用して、自社の持つ事業部や店舗等の競争意識を高めるマーケティング手法もあります。

良い例がドミナント戦略を行っている企業で、特定のエリア内でカニバリゼーションを起こし、店舗同士で売上やサービスの質向上を狙う戦略です。

店舗が自発的に独自の商品開発を進めたり、より質の高いサービスを研究したりするようになるため、企業としてのブランド価値も高める効果があります。

自社の競争に利用する場合は、収益につながった店舗や事業部に対し、特別報酬などを支払うといった条件をつけるとより効果的です。

【関連記事】競争優位性とは?分析するためのフレームワークと企業の実例紹介

カニバリゼーションを活用できている企業事例

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本来はデメリットの多いカニバリゼーションを活用し、逆に企業の収益性を高めた企業の事例についてご紹介します。

実例①トヨタ自動車

カニバリゼーションをマーケティングに活用した事例として、国内の大手自動車メーカー「トヨタ」が有名です。

トヨタには同系列の販売店として、トヨペットやカローラ、ネッツトヨタ、レクサスなどがあります。

実は、トヨタは自社の系列店をあえて同じ地域に置くことで、カニバリゼーションを起こしています。

トヨタの戦略的カニバリゼーションによって、同一地域内の自動車販売のシェアはトヨタで大部分を占められ、競合他社が同じ地域内に参入することがほぼ不可能な状態です。

加えて、系列店同士で競争意識を高めることにより、地域内のトヨタのブランド価値とサービスの質を高め、売上向上にもつながっています。

実例②The Procter&Gamble Company(P&G)

アメリカの大手企業「P&G」も、カニバリゼーションを活用した企業の1つです。

P&Gは1837年に創設されてから、100年近くにわたって石鹸製造を続けてきました。

しかし、当時チェアマンであるウィリアム・プロクター氏が「合成洗剤の開発によって、石鹸ビジネスは滅亡するだろう。しかし石鹸を滅亡させるのであれば、それはP&Gの手によってなされるべき」という言葉を残し、1930年代に合成洗剤開発に着手します。

その後発売された合成洗剤によって、競合他社の石鹸のシェアも勝ち取り、現代までの長きにわたって洗濯用洗剤業界のトップシェアを維持しています。

まとめ:カニバリゼーションはリスクと活用方法の両面を知ろう

カニバリゼーションは対策なしに起こせば、自社の業界内のシェアを奪い合い、既存事業の売上減少につながるリスクがあります。

一方でカニバリゼーションを活用すれば、同一地域内のシェアを拡大し、企業認知度を高め、より強固な市場シェアを獲得するチャンスにもなりえます。

戦略的カニバリゼーションを起こすには、デメリットまで考慮したうえで、自社内でできる対策を徹底することも欠かせません。

自社のマーケティング手法の1つとして、カニバリゼーションとドミナント戦略を活用してみてはいかがでしょうか。

 

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執筆者紹介

西村 聖司

アクセンチュアに20年以上在籍後、創業。主に製造業やサービス業のお客様に対して、営業改革や人事業務改革・人材育成、コミュニケーション変革などの企画やプロジェクトマネジメントのコンサルティングサービスを提供。中小企業診断士として、経営指導やベンチャー支援も実施。

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