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市場で勝ち残るためには、競合企業を知る必要があります。
競合企業を知り、自社と比較するための調査が「競合調査」です。
この記事では、競合調査とはなにか、競合調査のやり方や手順、競合調査を実施する過程で役立つフレームワークを紹介します。
また、競合調査を外注する場合のポイントも解説します。
競合調査とは?
競合調査とは、自社と同じ市場や顧客層などをターゲットにもつ競合企業を、さまざまな観点から調査することをいいます。
この競合調査は、自社と競合企業のさまざまな事項を比較し、差別化を図るために行う調査です。比較事項には、売上、利益、労働生産性、流通プロセスなどがあります。
競合企業は成長フェーズによって異なるため、中長期の競合と、短期的な競合は分けて考えた方がよいでしょう。
中長期の競合については、事業構造や経済圏など大きな視点で比較を行うのがマストです。
一方、短期的な競合についてはサービス・商品の機能や、組織面など細かいポイントの比較をする必要があります。
市場調査との違い
競合調査と似ている調査に「市場調査」があります。
市場調査とは、市場の動向やトレンド、顧客ニーズ、自社商品・サービスの認知度などを調査することです。
調査方法には、インタビューや電話、インターネットアンケート調査などがあります。
これらを使った調査により、マーケティング精度を高めることを目的としています。
競合調査との違いは、調査する対象と目的です。競合調査は競合企業の商品・サービスを調査し、自社と競合企業のさまざまな事項を比較・分析することを目的としています。
一方市場調査は、消費者やターゲットとなる顧客を対象に調査し、顧客の動向や市場のニーズを掴むことが目的です。
競合調査のやり方・手順を5ステップで解説
それでは、競合調査のやり方・手順を解説していきましょう。
ステップ①実施目的を決める
まず行うことは、自社が競合調査を実施する目的を決めることです。
目的を決めなければ、のちの調査内容にも影響が出て、ほしい情報がつかめなくなりますから、必ず明確にしましょう。
目的を決めるときには、どのような判断や意思決定につなげたいかを意識してください。
実施目的の例には次のようなものがあります。
- ビジネスモデルの改善
- 事業戦略の立案
- 新製品・サービスの考案
- 既存製品・サービスの改良
- 生産効率の改善
- 戦略・オペレーションの改善
- 販売チャネルや商流の見直し
ステップ②競合企業を定義する
次に、自社の競合企業を定義します。
このとき注意したいのが、以下の2点です。
- 実施目的に合わせた競合企業を定義すること
- 類似業界や業態以外にも競合企業が存在すること
たとえば目的が「既存製品・サービスの改良」であるなら、類似商品・サービスを扱い、現在シェアのトップにいる企業、成長している企業、最も低い企業をピックアップします。
ただし、競合企業は必ずしも類似商品・サービスを扱っている業界や業態だけに限りません。
たとえばコーヒーショップであれば、喫茶店・カフェといった類似業態だけでなく、コンビニやファストフード店も対象となります。
また扱う商品やサービスが違っても、顧客を共有しているのであれば競合企業になりえます。
顧客がどのような価値を求めているのか、顧客のお金や時間を誰と奪い合っているのか、という観点から検討し、3〜10社程度に絞りましょう。
ステップ③仮説を立てて調査項目を決める
競合調査をする前に、自社の特徴とウィークポイントを洗い出します。
その情報をもとに、仮説を立てます。仮説と調査項目の例は次の通りです。
(例)「既存製品のシェアが落ちているのは、自社よりも競合製品の性能がいいからだ」
この場合は、競合製品のKBF(購買決定要因)を調査項目にします。
(例)「競合商品が低価格を実現しているのは、自社よりも生産効率がいいからだ」
この場合は、競合他社のバリューチェーンを調査項目にします。
仮説を立てるときには、最新の社会情勢、トレンド、業界の今後の流れなどを意識するようにしましょう。
ステップ④競合調査の実施
仮説により導き出した調査項目にもとづき、競合調査を実施します。
おもな調査方法には次のようなものがあります。
- 競合他社の製品・サービスを購入する
- インターネットでリサーチする
- 元社員や、知り合いの社員へのヒアリング
- マーケット調査の実施
ステップ⑤分析・検討
最後に仮説と調査結果を照らし合わせ、分析・検証していきます。
分析の際には「3C分析」や「4P分析」といったフレームワークを活用すると、効率よく分析できます。
分析をし終えたら、報告書などにまとめるとよいでしょう。
なお、競合調査で使えるフレームワークは次の項で解説します。
以下の関連記事でも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
【関連記事】新規事業アイデアの出し方|フレームワーク・大企業の成功事例も紹介
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競合調査で使用すべきフレームワーク
競合調査を実施する過程で役立つフレームワークと、その活用方法を5つ紹介します。
フレームワーク①ファイブフォース分析
ファイブフォース分析とは「業界内での競争」「新規参入者の脅威」「代替品の存在」「買い手(顧客)の交渉力」「売り手(サプライヤー)の交渉力」の5つの競争要因を材料に、自社の競争優位性を分析できるフレームワークです。
5つの競争要因の詳細は、次のとおりです。
- 業界内での競争:既存の業界における競合他社との競争状況
- 新規参入者の脅威:既存の業界へ新たに参入してくる企業の脅威
- 代替品の存在:既存の製品・サービスに代わって、同じ顧客ニーズを満たす新たな製品・サービスの脅威
- 買い手(顧客)の交渉力:消費者や顧客といった買い手と、自社の間にある力関係
- 売り手(サプライヤー)の交渉力:原材料や部品の調達先といったサプライヤーと、自社の間にある力関係
ファイブフォース分析結果は以下のように活用できます。
- 業界内での競争、売り手と買い手の分析により、業界内の収益の上げやすさがわかる
- 業界内での競争、新規参入者、代替品の検証から、自社の利益の取り分を探ることができる
- 自社が収益を上げやすい戦略につなげられる
なおファイブフォース分析は、のちに紹介する「SWOT分析」と併用することで、結果の精度を高めることができます。
フレームワーク②3C分析
3C分析は「Customer(市場環境・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの要因を調査し、市場における環境を体系的に整理するためのフレームワークです。
このフレームワークを使うことで、事実を整理し、自社の成功要因を見つけることができます。
3つの要因の分析は、Customer → Competitor → Company という順に行います。それぞれの分析では、次の項目を明らかにします。
- Customer(市場環境・顧客):市場規模、市場の成長性、顧客ニーズなど
- Competitor(競合):業界のシェア、競合他社の強み・弱み、競合の事業戦略など
- Company(自社):自社のビジョン、事業戦略、財務状況、製品・サービスのラインナップなど
3C分析では事実を整理することしかできないため、ほかのフレームワークと併用して分析していくことになります。
フレームワーク③バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、原材料を製品にして顧客に届けるまでの各活動で、どれくらいの「バリュー(付加価値)」が生み出されているかを分析するフレームワークです。
各活動には主活動と支援活動があり、主活動は調達~販売・アフターサービスまでの流れに直接関わる活動のことです。
製造、購買物流、出荷物流、販売・マーケティング、サービスなどがあります。
支援活動は、調達~販売・アフターサービスまでの流れに間接的に関わる活動のことです。調達、技術開発、人事管理、企業インフラ管理などがあります。
バリューチェーン分析の目的は、各活動にかかるコストを把握すること、自社で差別化を図るために役立てることがあります。
また他社に当てはめて、競合の強みや弱みを把握することも可能です。
フレームワーク④4P分析・4C分析
4P分析は、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」の4つの企業視点から分析するフレームワークです。
4C分析は「Customer Value(顧客価値)」「Cost(顧客コスト)」「Convenience(利便性)」「Communication(コミュニケーション)」の4つの顧客視点で考えるための手法となります。
いずれの分析も、自社のマーケティング戦略を立てる際に利用するのが一般的ですが、他社に当てはめれば競合調査が可能です。
フレームワーク⑤SWOT分析
SWOT分析とは、内的要因となる「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」と、外的要因となる「Opportunities(機会)」と「Threats(脅威)」の4つの要素で要因分析するフレームワークです。
それぞれの要因の詳細は次のとおりです。
- Strength(強み):自社や自社商品の長所や得意とするところ。内部環境のプラス要素。
- Weakness(弱み):自社や自社商品の短所や苦手とするところ。悪い影響を及ぼすと考えられる内部環境のマイナス要素。
- Opportunity(機会):社会や市場の変化などにより、自社や自社商品にとってプラスに働く外部環境のプラス要素。
- Threat(脅威):社会や市場の変化などにより、自社や自社商品に悪影響を及ぼすと考えられる外部環境のマイナス要素。
SWOT分析の目的は、効果的な経営・マーケティング戦略を立案することですが、内的要因と外的要因の2×2軸に分けることで、競合と自社の立ち位置を整理することができます。
自社事業に関してSWOT分析を行う場合、情報は整理できるものの示唆の導出が困難なことが多いため、個人的にはあまり好きなフレームワークではないのですが、競合についてSWOTを行うと自社の視点ではあまり捉えられなかった競合のウィークポイントや自社の差別化ポイントが炙り出せたりするため、競合調査の場合にはおすすめとなるフレームワークです。
【関連記事】新規事業に役立つおすすめフレームワーク4選!使い方のポイントも
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情報取得が困難な場合はどうする?
日本国内で必要な情報・レポートがピンポイントで無い場合には、断片的な情報や海外レポートなどを参照し推計することが可能です。
レポートには詳細な情報が無い場合が多いですが、全体の市場規模情報であれば無料で開示していることが多いため、いくつかのレポートを見て大体の市場規模とどの程度成長するかを推測することができる場合が多いです。
競合企業の内部情報を直接取りに行くことや、競合企業から人を引き抜いて情報共有してもらうなどはNGですが、コンサルタントを雇ってアナロジーとして教えてもらう、公開情報から推測を組み立てるなど方法はあるため、コンプライアンスを守りながらの情報取得を心がけましょう。
競合調査を外注する場合のポイント
競合調査や情報取得は、前述の通り外注という選択肢もございます。その場合のポイントを解説していきます。
ポイント①調査目的を明確にする
競合調査は、目的によって調査項目が異なります。
よって競合調査を外注する際には、調査を実施する目的、依頼内容を明確にしなければなりません。
目的があいまいなまま依頼してしまうと、余計な調査項目が追加される、必要な調査結果が得られないなど、想定外の事態が起きることもあります。
そんな事態にならないためにも、調査目的、自社でどこまで調査するか、外注する際の依頼内容を明確にしておきましょう。
ポイント②調査期間を設定する
調査項目によって、調査にかかる時間はさまざまです。
たとえば競合サイトのSEO分析では、ある程度の時間が必要となります。
そういったことも考慮し、調査期間を設定するようにしましょう。
また特定の期間に絞った調査を行いたい場合は、その旨を事前に伝えておくことも大切です。
ポイント③競合先は3~10社程度に絞り込む
調査する競合企業は、3~10社に絞り込むようにしましょう。
調査対象が多すぎると、無駄なコストがかかってしまいます。
競合先を絞り込むときには、実施目的に合った競合先か、顧客がどのような価値を求めているのか、顧客のお金や時間を誰と奪い合っているのか、という観点から検討しましょう。
まとめ:競合調査は差別化戦略を立てることに有効
競合調査をすることで、競合企業の分析ができるのに加え、自社の強みや弱みも把握できます。
この調査結果は、競合との差別化戦略を立てることに有効です。
競合調査をする際は、目的を明確にすることと、実施目的に合った競合先を選定することが重要となります。
また効率よく調査するために、ご紹介したフレームワークを活用することや、外注するという方法も検討してみるとよいでしょう。
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