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変動が激しく不確実性の高い現代では、中長期的で柔軟な視点を持って近未来を予測する戦略が必要とされています。
その実用的な施策として活用できる手法がシナリオプランニングです。
今回の記事では、シナリオプランニングの概要やメリット、実施する手順を徹底的に解説します。
また、シナリオプランニングで成果を上げた企業事例を集めてみました。
シナリオプランニングとは?
シナリオプランニングとは、中長期的な将来に起こりうる未来の可能性を複数のシナリオとして描き、その結果を企業や組織の経営判断に活用する戦略策定手法のことです。
近年起こったコロナショックのように現代は「VUCA」の時代といわれています。
VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとった目まぐるしく変わる予測困難な状況を示す言葉です。
もともと1990年代の冷戦終結後、不透明で複雑となった国際情勢を表している軍事用語ですが、2010年代にビジネスシーンでも経営やマネジメントの文脈において使われるようになりました。
VUCAの時代ともいうべき昨今の社会的背景を鑑みた場合、シナリオプランニングで外部環境の変動に対応する準備が必要です。
実際に、世界や日本で数多くの企業がシナリオプランニングを取り入れ、経営・事業戦略を進めています。
シナリオプランニングは、未来を予測するものではありません。
あくまでも5年~10年以内に起こりうる可能性がある現実的なシナリオを複数想定し、将来に向けた戦略・施策を柔軟かつ思慮深く検討することが目的です。
シナリオプランニングを実施するメリット
新規事業の立ち上げや事業の成長戦略策定をおこなう際、シナリオプランニングの存在は、企業や組織にどのような効果をもたらすのでしょうか?
ここでは、シナリオプランニングを実施する具体的なメリットを解説します。
メリット①環境変化への対応力が向上する
シナリオプランニングを実施する最大のメリットは、将来的に起こりうる環境変化への対応力が向上することです。
先行きが不透明な未来に何の備えもなければ、いざというときに適切な対応ができません。
しかし、中長期的な視点で複数の未来を予測するシナリオプランニングを導入することで、想定外の状況を迎えたとしても、柔軟に対応できるようになるのです。
あらかじめ複数の環境変化を前提に施策を立てていれば、リスクを抑えて成果を得られる可能性が高まるでしょう。
メリット②現在の方針を再確認できる
企業や組織における現在の方針を再確認できる点も、シナリオプランニングを実施するメリットのひとつです。
予測が困難とされる中長期的な未来に備えるためのシナリオプランニングですが、複数のシナリオを作成する際、現在の施策や取り組みを見直す機会にもなります。
きたるべき将来に向け「現在の施策が果たして適切なのか」「取り組みの改善が必要なのでは」など、妥当性の判断材料として活用可能となるからです。
メリット③組織の最適化を進められる
シナリオプランニングで中長期的な未来が予測できれば、組織の最適化を進められるようになります。
これは複数のシナリオを通じ、現在の組織における改善点が浮き彫りとなるためです。
日常的な業務が問題なく遂行できている場合、現状維持のまま運営を続けることが一般的となっています。
しかし曖昧で不確実な未来に対応できる堅牢な組織を作るためにも、さらなる体制の強化や人材の育成・獲得を現状と比較しながら実行できるようになります。
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シナリオプランニングを実施する手順
不確実な未来に備えるため、実際にシナリオプランニングを活用する場合、どのような段取りを踏めば効果を得られるのでしょうか?
ここでは、シナリオプランニングを実施するときの具体的な手順をご紹介します。
ステップ①テーマを明確にする
まずはシナリオ・プランニングを活用して何を組織や事業に反映させたいのか、テーマを明確にすることです。
そのためにも自社のビジネスモデルを分析し、その現状や抱える課題などを把握してください。
シナリオのテーマを設定する場合「時間軸」と「地域軸」を基礎とします。
想定する未来を指す時間軸では「具体的に何年後のことを扱うのか」を決め、自社が携わる市場を指す地域軸では「今後どのような戦略を展開するのか」を検討しましょう。
ステップ②外部からの環境変化を予測する
時間軸と地域軸が決まれば、次に外部からの環境変化を予測し、自社の将来に影響を与えそうな要因を徹底的に洗い出します。
その際、政治・経済・社会などの多角的な観点から、環境変化の要因を洗い出せる「pest分析」や、新規参入業者・売手・買手といった5つの脅威を分析できる「5force」などの手法が役立つでしょう。
ここで洗い出した要因は「インパクト」と「不確実性」をマトリクス図で表現し、それぞれの要因が持つ重要度を特定・整理してください。
インパクトとは、外部の環境変化が自社へ与える影響度を指し、これが大きいほど自社への影響も大きくなるものです。
不確実性とは、将来起こるか否か予測ができないことを指します。
ステップ③未来のシナリオを作成する
ここまで抽出したさまざまな情報をもとに、中長期的な未来のシナリオ作成に取りかかります。
先行きが見えない不透明な未来を予測した内容となるため、不確実性が高いことを前提に複数のパターンを想定したシナリオを描き進めていきましょう。
そして完成したシナリオを細部まで詳細に分析をおこない、自社の戦略や施策といったビジネスモデルに反映させるための立案や検討をおこなってください。
またシナリオを活用すれば、新規事業の立ち上げにも役立てることが可能です。
シナリオプランニングの企業事例
シナリオプランニングを導入している企業は、世界中に数多く点在します。
具体的には、どのような成功事例が挙げられるのでしょうか?
ここでは、シナリオプランニングを実施することで成果を上げた企業をご紹介します。
ロイヤル・ダッチ・シェル
ロイヤル・ダッチ・シェルは、イギリスに本拠地を置く世界第2位のエネルギー関連事業を展開する多国籍企業です。
シナリオプランニングは1965年にロイヤル・ダッチ・シェルが始めた「長期研究」がもとになっているため「シナリオプランニングの先駆者」と呼ばれています。
1970年代初頭、石油の支配権が欧米からOPEC諸国にシフトするため、原油価格が急騰する可能性をシナリオとして作成しました。
実際に予測したシナリオが功を奏し、オイルショックの影響から最も早く立ち直った企業として名を馳せています。
ユニ・チャーム
日本の大手衛生用品メーカーであるユニ・チャームは、気候変動に関する問題と対策を事業戦略における重要な要素として位置付けています。
そのため、シナリオプランニングに関しては「国家間の関係性」と「政策や人々の意識」といった不確実性が高い要因から4種類のシナリオを作成し、気候変動含めたリスクマネジメントを推進している企業です。
今後もサステナビリティな経営を目指しながら、中長期的な未来を見据えています。
まとめ:VUCAの時代に適したシナリオプランニングを実施しよう
シナリオプランニングとは、中長期的な将来に起こりうる未来の可能性を複数のシナリオを描き、その結果を自社の経営に活用する手法です。
不確実性の高い現代では、複数の将来を予測したシナリオを作成して未来に備えることは、マストな戦略であり施策といえるでしょう。
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