イノベーションとは?意味や種類・企業の課題を解説

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世の中の変化のスピードが速くなり、企業を取り巻く環境がめまぐるしく変わるなかで、企業が持続的に成長していくために必要なものとしてよく耳にするのが「イノベーション」です。

この記事では、そもそもイノベーションとはどういう意味なのか、イノベーションにはどのようなものがあるのかなどについて説明していきます。

イノベーションとは?

イノベーションとは?

イノベーションというと、技術革新と捉えられがちですが、異質のもの同士の結合を含めたすべての革新的なものを指します。

そのためイノベーションには、新しい市場や新しい資源の開発、新製品や新技術の開発、組織の改革や新制度の導入といったものも含まれます。

イノベーションといえば経済学者のシュンペーター(1983年~1950年)の名前が頭に浮かぶ方が多いと思いますが、彼はイノベーション(「innovation」)を「新たなものを導入する」という意味で、ラテン語の「新しくする」という意味の「innovare」から造語したといわれています。

またイノベーションには、新たなものを導入する、つくり出すだけではなく、既存の産業構造を創造的に破壊することも含まれることも重要な点です。

イノベーション シュンペーターによる5つの分類

イノベーション シュンペーターによる5つの分類

シュンペーターは、イノベーションには次の5つのパターンがあるといいます。

  1. プロダクト・イノベーション
  2. プロセス・イノベーション
  3. マーケット・イノベーション
  4. サプライチェーン・イノベーション
  5. オーガニゼーション・イノベーション

それぞれ解説していきます。

①プロダクト・イノベーション

新しい商品・サービスを出すことで、いままで市場を押さえていた他社商品・サービスを駆逐していくことです。

ソニーのウォークマンがこの代表例と言われますが、それまで音楽を聞くのは据え置きタイプが主流でしたが、ウォークマンの登場によって場所や環境に関係なく音楽を楽しむことが可能になりました。

②プロセス・イノベーション

新しい生産方法(方式)の導入です。

一言でいえば生産ラインを変革することを意味します。代表的なモデルとしてはユニクロの製造モデルが挙げられます。

企画・製造・小売を一貫して行うモデルで、中間搾取がなくなり販売価格を抑えられるだけでなく、製品に消費者の要求を素早く反映できる、在庫のコントロールを含めた管理がしやすくなるなどのメリットがあります。

③マーケット・イノベーション

いままで他社が取り組んでこなかった市場に参入することです。

女性専門のフィットネスクラブで有名なカーブスは好例といえます。プールやシャワーといった従来のあたり前と考えられていた設備を備えず、メインの顧客層を中高年の女性に絞ったコンパクトな店舗展開で住宅街にも出店しています。

大規模施設にかかる大きな設備投資も必要なく、この点においてもスポーツビジネス界に変革をもたらしています。

④サプライチェーン・イノベーション

これは新しい資源の獲得を意味します。サービスの元になる原材料の変革のことです。

この原料については既存のモノであるとか新しいモノであるとかは問いません。例えば、飲食店で食材などを調達する場合、外国産の安くて質の良い材料にチェンジするというようなすでに存在する原料を使って事業を変革することも、サプライチェーン・イノベーションといえます。

⑤オーガニゼーション・イノベーション

これは組織を改革することでイノベーションを生み出しやすくすることです。

組織内に新しい風が吹きやすく工夫することなどがイノベーションを生み出します。年次や年功序列に関係なく(たとえ新卒であったとしても)、能力とアイデアがあれば、その人に子会社の社長を任せるなど、といった例がこのイノベーションにあたります。

このイノベーションには後述するオープンイノベーションや他社との協業なども選択肢として挙げられます。

イノベーションの種類

イノベーションの種類

イノベーションに対する理解を深める意味で重要なのが、イノベーションの種類です。

最近よく耳にする「破壊的イノベーション」もこの分類で当てはまります。

イノベーションの様々な事例や事象がどの点で優れているか、この分類に当てはめてみると理解が一層深まります。

オープンイノベーション

オープンイノベーションは、業種や業界の枠にとらわれず、多方面との連携で新しいサービスやビジネスモデルを創造することです。

共同開発や共同研究によって、自社だけで行う場合では得られない視点や工夫から新たなものを生み出せる可能性が広がります。

クローズドイノベーション

クローズドイノベーションは、オープンイノベーションとは逆で、研究から開発まで全工程を自社で実施することで、新たなサービスやビジネスモデルを生み出すことをいいます。

自社で完結できるため、生まれた利益は全て自社に還元されるというメリットがあります。

いままでの日本はこのクローズドが主流でしたが、産業・ビジネスのグローバル化に伴い、オープンに主役の座を取って代わられました。

破壊的イノベーション

破壊的イノベーションは、技術革新やアイデアによって、既存事業の安定した状況を打破し、その事業の属する業界の構造を一変させるような状況を生み出します。

音楽業界がまさにそれで、生演奏→レコード→CD→MD→iPod→スマートフォンの流れが示す通り破壊的イノベーションが間断なく続いた好例といえるでしょう。もちろんそこには価格破壊、品質の改良も絶え間なく行われてきました。

持続的イノベーション

このイノベーションは別名「創造的イノベーション」とも呼ばれ、既存市場においてすでに顧客に受け入れられている商品・サービスの価値をさらに向上させることでイノベーションを起こすことをいいます。

このイノベーションにおける効果的な手法として、日本企業が得意とする改善や改良が挙げられます。

ソーシャルイノベーション

社会問題の解決のための革新的な事業、取り組みのことをいいます。

このイノベーションによって企業は自社の利益を追求するだけではなく、社会的な問題に正面から取り組み解決するための価値を創出します。またソーシャルイノベーションはSDGs(持続可能な開発目標)を達成するためにも重要です。

環境問題や地球温暖化、そしてエネルギー問題といった社会問題の解決に向けて、ソーシャルイノベーションを通じた事業展開がSDGsの目標達成の一助となります。

グリーンイノベーション

このイノベーションは、産業をはじめとする社会の成長と、環境の維持・発展という関係性において、どちらか一方が良くなれば一方が悪くなるという関係ではなく、双方向的に持続可能で好循環が生まれるような関係を構築していくことです。

つまり、社会の持続可能な発展を目標とし科学技術やイノベーションによって変革を生み、それによって環境問題に取り組むということです。

ラディカルイノベーション

「ラディカル=根本的」という言葉が表すとおり、このイノベーションが起こった場合、そのマーケットでは、全面的な変革が求められます。

つまりビジネスモデルや技術の両面で、従来の延長線上にはない全く新しい変革がもたらされます。

インクリメンタルイノベーション

イノベーションは、先に挙げたラディカルイノベーションのように急進的なものばかりではありません。

このイノベーションは、根本的に変革するのとは違い、既存の技術やビジネスモデルに修正や改善を繰り返し図っていくことでもたらされる変革のことです。

自動車でいうところのマイナーチェンジのようなものだと考えるのがいいでしょう。

 

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イノベーションを起こす7つのきっかけ(機会)

イノベーションを起こす7つのきっかけ(機会)

これは、経営学者のドラッカー(1909年~2005年)が提唱したイノベーションを起こすことができる機会のことで、この「機会」を見逃さなければ、イノベーションを起こせる可能性が高まるといわれています。

その機会は以下の7つとなります。

予期せぬ出来事

業務を遂行していると予期せぬ出来事が起こることがあります。

予期せぬ失敗、予期せぬ成功、どちらもありますが、その原因を探ることが、イノベーションの機会につながります。

ギャップを探す

ギャップとは、理想と現実の差です。例えば、売上が上がっているのに利益が出ていない、需要が大きくなっているのに売上に結びついていないなど、今起きている現象から推測される理想と現実の間にギャップがある場合、そのギャップを埋めることがイノベーションにつながる可能性があります。

ニーズの発見

隠れたニーズを見つけることができればイノベーションにつながる可能性が高いでしょう。

ドラッカーは、工程におけるボトルネックの解消する「プロセスニーズ」、労働力の不足を補う「労働力ニーズ」、研究開発における足りない知識を補う「知識ニーズ」の3つから新たなニーズを探ることができるとしています。

産業構造の変化

特定の業界や市場において、急激に市場が成長する、顧客のニーズが変化する、新しい技術が生まれるなど、大きな変化に着目することでイノベーションの機会を探ることができます。

人口構造の変化

日本のように、少子高齢化によって2050年には5人に2人が60歳以上になるような人口構造の変化によって生まれるニーズを掴むことでイノベーションにつながる可能性があります。

認識の変化

人々の認識や気持ちの変化によって行動にも影響が見られるような場合、その人々の認識の変化を読み取ることで、イノベーションの機会を探ることができます。

新しい知識の活用

これは新しい技術と置き換えるとわかりやすいでしょう。

新しい技術によって人々の生活や産業にどのような変化が生まれるか、そこにイノベーションの可能性が生まれます。例えばAI技術の発展などによって生まれるサービスなどがこれに当たるでしょう。

イノベーションを起こす際に企業が直面する課題

イノベーションを起こす際に企業が直面する課題

イノベーションを起こすことができれば、業界や社会に対して新たな価値や好影響を与えることができます。

しかし、そこにはクリアしなければならない課題がいくつかあります。ここでは日本企業に的を絞って説明します。

課題1:短期間で結果を出そうとする

イノベーションの実現には、ある程度の時間を必要とするものが少なくありません。

イノベーションの失敗例には短期間で結果(成果)を求めようとする取り組みが多いようです。

企業が生き残っていくためにはイノベーションは重要ではありますが、イノベーションといわれるような大きな変化・変革を起こすためには、それ相応の時間とエネルギーが求められることもしっかり認識する必要があります。

課題2:アイデアが出てこない

「イノベーションに常識はいらない」といわれることもありますが、常識の枠の中で考えたアイデアは通用しないことが多いです。

なぜなら、常識の枠であれば他の人も同じことを考えている可能性が高いからです。時に突拍子もないような、または遊び心から生まれるアイデアがイノベーションを起こすことがあります。

残念ながら日本企業の多くは常識やしきたり、そして既存の成功体験に縛られることが多く、イノベーションに至るアイデア・発想が生まれにくいといわれています。

特に大企業や古い体質の残る企業では、変化やルールから外れることを嫌う風潮もあります。イノベーションを求めるのであれば、柔軟な組織風土が求められます。

課題3:クローズに固執しない

日本の企業にはなんでも自前で対処しようという傾向があります。

つまりクローズドイノベーションを選択しがちだということです。利益を独占したいという考え方はわからないでもありませんが、クローズドイノベーションでは世の中の変化や競争の激化に対応しきれなくなっているのも事実です。

私たちがコンサルティングを行うなかでもオープンイノベーションのほうが成功確率を高くなるケースが増えています。

イノベーションを起こすために必要なポイント

イノベーションを起こすために必要なポイント

イノベーションを起こす企業、それを主導するヒトはどのような環境でどのようなことに着眼しているのでしょうか?

それを知ることがイノベーションを生み出す第一歩といえるかもしれません。

ここでは3つにポイントを絞って説明していきます。

ポイント① 好奇心

まず好奇心を持ち続けることです。

仕事でも私生活でも小さなことから大きなことまで情報を収集・整理し、製品やサービスのイメージを膨らませます。

自分が興味がある分野だけでもヒントはあると思いますが、異なる分野にヒントが隠れているかもしれません。

ポイント②会社ではなくユーザーを見る

企業に所属していると、どうしても自社の利益や周りの顔色を優先してしまいます。

しかしイノベーションを起こすためには、自社の商品・サービスを利用するユーザーを最優先します。

ユーザーに目を向けることによってはじめて「既存の商品・サービスとはちがったアイデア」を生み出すことができるようになります。

ポイント③イノベーションを起こす仲間の存在が必要

アイデア創出のために尊敬できるメンバーとともに働くことも大事です。

柔軟で奇抜なアイデアを出すためにも安心感やチャレンジ精神を支えてくれる上司・同僚の存在は欠かせません。

こうした社員同士の関係性を考慮したチームづくり、イノベーションを起こしやすい職場の創出は、これからの企業にとって欠かせない要素といえます。

イノベーションの創出事例

イノベーションの創出事例

①株式会社ZOZO

この会社はファッションEコマース「ZOZOTOWN」を運営しています。この会社の何が革新的かと言うと「ZOZO SUIT」というサイズ計測のためのウェア開発です。

消費者がインターネットで服を購入する際、最も悩ましいのはサイズの問題でした。画像だけではほんとうに自分の体形に合うサイズかわからず、サイズ表記があったとしても、メーカーやブランドに多少の違いがあり、購入という最後の一歩が踏み出せない経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

「ZOZO SUIT」はそんなファッションECが長年払拭できなかった難問を解決したのです。スマホをかざすだけで自分の体形データが読み取れ、誰でも自分にピッタリのサイズの服を簡単に探すことができるようになったのです。これは大きな変革です。

また、ZOZO SUITによって得た大量の顧客データを収集、活用することによってまた新たなイノベーションの可能性を生み出しています。

②富士フィルム株式会社

富士フイルムはその名のとおり写真フィルムの領域で、トップを争うほどの会社でした。

ところが、写真の主流がアナログからデジタルへと急変し、写真フィルムの市場規模は10分の1にまで縮小します。しかし、富士フイルムは化粧品や医療機器等の市場に参入することでこの苦境を乗り越え、売上を大きく伸ばし、いまも成長を続けています。

「将来、写真フィルム市場は消滅する」と予測し、「他社に破壊されるくらいなら自ら破壊する」という精神で、デジタルカメラの原点を開発したのは、実は富士フイルムでもあるのです。

これはある意味ラディカルイノベーションの好例ともいえるのではないでしょうか。

③メルカリ

メルカリは不用品を売りたい人と中古品がほしい人のためのマッチングアプリを提供して成功した好例です。

同社は、

  • 先駆者利益を生かして国内シェアを維持
  • メルカリ便など独自の発送方法でアクティブユーザーを確保
  • テレビCMなどに積極的投資して集客

これらの施策によって、2013年創業から急成長、現在では、中古品業界のトップランカーとして確固たる地位を築きました。

同社では、経営陣を含め社員がオープンにコミュニケーションを取れる環境を提供、社員の積極的な発信、スピーディーな行動を促進する風土づくりを行い、イノベーションの創出を実現・支援しています。

まとめ

「市場で確固たるポジションを築く」

この命題は持続可能な企業にしていくための非常に大事な要素で、そのためにはイノベーションが必要です。イノベーションによって生まれた新たな商品や技術は、新しい価値の創出や市場開拓を可能にするからです。

私たちは、イノベーションに対する専門的な知識と経験を蓄積、イノベーション創出のためのアイデア、発想に関して中心的または補助的な役割を担います。「イノベーションを起こす、起こさせる環境・組織づくりは急務かつ確実でなければならない」との私たちの想いを、この機会にみなさまと共有したいと思います。

 

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執筆者紹介

河上 祐毅

ムーンプライド 取締役

アクセンチュアの戦略グループで通信・メーカー・メディア企業を中心に支援、クライアントチームへ転部を経て10年間在籍の後にマクドナルドにてプロモーション効果分析や消費者調査を担当。ムーンプライドではヘルスケア・通信・ハイテクメーカーを中心にDX営業、新規事業立ち上げ、デジタルマーケティング領域で支援を実施。

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