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従来の公共交通機関がカバーできないエリアの交通手段として、オンデマンドバスが注目されています。
オンデマンドバスとは、どのようなサービスなのでしょうか?
この記事では、現時点でオンデマンドバスについて行われている取り組みや事例を紹介し、事業として成長させるために必要な視点を解説しています。
オンデマンドバスとは?
オンデマンドバスとは、需要に応じて運行される相乗り形態のバスサービスです。
従来のバス路線が併用され、利用者の数に合わせて運行されるため、地方の特性や個人のニーズによって柔軟に利用が可能です。
定期運行のバスでは収益性が課題となり運営が難しかった地方の人口がまばらなエリア、高齢化が進むエリアなどの公共交通不便地域を中心に導入が進んでいます。
オンデマンドバスは比較的新しいサービスのため、現時点ではどのような形態が適しているか実証段階にあります。
対応するエリアが限られており、IoTやAI、自動運転技術とも親和性が高いと考えられている、さまざまな可能性が検討されているビジネスです。
オンデマンドバスの具体的な取組事例
まだまだ成長段階にある、オンデマンドバスが現在どのような形で取り組まれているのか、3つの団体を例に紹介します。
- 大阪メトロ
- 北海道石狩市
- 滋賀県米原市
大阪メトロ
大阪メトログループは早期にオンデマンドバスを導入した企業の一つで、2021年から運行を開始しています。
オンデマンドバスを都市型MaaS構想の中核となる事業として進め、地下鉄や従来の路線バスではカバーしきれていなかったエリアの交通網の改善を試みています。
オンデマンドバスの導入当初は、配車サービスとの類似点があることから、当初市民からはタクシーと同様に利用できるという誤解も生まれていました。
そのためオンデマンドバスの特性を周知し、理解を得るための努力も行っています。
また地下鉄の運行情報の提供やシェアライドの予約などができる、エリア内の交通をサポートするアプリ「e METRO」を配信しており、オンデマンドバスもこのアプリから予約が可能になっています。
北海道石狩市
北海道石狩市のオンデマンドバス事業「いつモ」は「いつでも つながる モビリティ」をコンセプトに掲げたサービスです。
一般的な路線バスと高額なタクシーの中間に位置し、利用者の予約に基づいて柔軟に運行しています。
実証運行では、通勤を目的とした「通勤オンデマンド交通」と市内での移動を目的とした「市内オンデマンド交通」の2つを運行しています。
通勤用は石狩湾新港地域の最寄り駅をミーティングポイントとし、市内用は地元のバス停やコンビニ、郵便局など利用者の多い場所をミーティングポイントにしています。
運賃は通勤用が運行距離に応じて400〜800円、市内用は300円のワンプライス設定となっており、スマートフォンアプリを利用して予約でき、手頃な価格で快適な移動が可能です。
滋賀県米原市
滋賀県米原市では、2017年から相乗りサービス「まいちゃん号」をスタートさせています。
米原市では2004年から2つの登録制のデマンド交通を運行していましたが、後に「まいちゃん号」に統合されました。
相乗りサービスが登場してから、自治体が取り組んだ初期の成功例として紹介されることも多いサービスです。
「まいちゃん号」はバス車両ではなく一般のタクシー車両を使用していますが、路線バスと同じくあらかじめ定められた停留所と時刻に合わせて運行されます。
令和2年度では 27,159 便 が運行し、延べ 42,029 人に利用されました
参考:米原市
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オンデマンドバスの競合サービス
オンデマンドバスが一般的になると、公共交通不便地域の交通を担っているタクシーと競合することが考えられます。
しかし、自治体が主導となってオンデマンドバスの業務をタクシー会社に委託するという事例もあり、共存が可能であることがわかっています。
直接的に競合になると考えられているのは、Uberが展開するライドシェアサービスです。
Uberは日本においては、長らく法的な制約や規制の影響でライドシェアの展開が難しい状況があり、現時点でもタクシーの配車サービスのみにとどまっています。
しかし近年、一部の地域で実証実験や提携を通じて展開の動きが見られます。
また日本国内での法整備や規制緩和に期待が寄せられ、近い将来にライドシェアも解禁される可能性もあります。
オンデマンドバスとUberはどちらも乗り合いサービスであり、価格帯においては競合が発生しやすいと考えられます。
オンデマンドバスに取り入れるべき要素
オンデマンドバス事業は現在『地域公共交通確保維持改善事業』の支援対象となっており、社会貢献的な意味合いも強く自治体との綿密な連携が必要です。
また予約があって初めて運行するというビジネス形態のため、事業として成功させるためには効率的な運行が課題となるでしょう。
例えばUberのアプリでタクシーを呼ぶ際には、乗車位置と同時に目的地の入力が必要になります。
最初の予約時から目的地がわかることで、付近の顧客からの事前予約を受けることが可能になり、ドライバーの無駄な移動を削減しています。
もしくは、移動に関するそのほかのニーズとの組み合わせも効果があるでしょう。
日用品の運搬や、観光需要への対応など運行エリアの資源や課題を有効活用して、オンデマンドバス事業と結びつける工夫が大切です。
またオンデマンドバスの予約にアプリを用いる場合は、ターゲットとなる層に合わせてUIをデザインすることや、使用方法の認知活動も欠かせない課題です。
オンデマンドバスの事業立上げ・参入を考えている企業の方へ
オンデマンドバスがこれから発展していくためには、人の運搬だけにこだわらず、物流をはじめとした幅広い事業と組み合わせることが大切になるでしょう。
例えば宅配クリーニングや地元のスーパーで購入した商品の運搬など、地域の特色や需要に応じてさまざまなサービスが考えられます。
また、オンデマンドバスは社会貢献の意義が高い事業であることからも、自治体から補助が受けられる可能性もあります。
現在の補助金の状況や、それぞれの地域の事情に合わせたオンデマンドバス事業のお手伝いはぜひ「TACHIAGE(タチアゲ)」にお任せください。豊富な成功例や、地方によって異なる特性から最適な事業プランを提案させていただきます。