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目次
ビジネスを取り巻く社会環境は変化が激しく、先行きが不透明な時代です。その中で企業は成長戦略を描き、それを確実に実行していくことが求められます。そして、企業の成長戦略に欠かすことのできない一つが、新規事業です。
今回は新規事業でつまずきやすいアイデアの創出に関して、どのように考えていけばよいかを説明していきます。
新規事業の必要性
ほとんどの商品やサービスにはプロダクト・ライフサイクルがあり、成長期、成熟期、そして最終的には衰退期を迎えることになります。
衰退期を迎えたときに別の収益源がなければ企業は存続が難しくなるため、別の収益源をつくるために企業は新規事業に取り組む必要があります。
さらに、現代は消費者ニーズの変化のスピード、技術革新のスピードが速くなったことからプロダクト・ライフサイクルが短くなっています。そのため、新規事業を創出することで、持続的に成長をしていける組織・体制づくりが急務となっています。
【関連記事】新規事業を立ち上げるときに知っておきたいポイント4選!プロセスもステップごとに解説
大企業において新規事業アイデアを出す際の課題
中小企業に比べて比較的経営基盤が安定している大企業でも、新規事業の開発は活発におこなわれています。
中小企業に比べ人材も資金も潤沢な大企業は、新規事業も成功しやすいと考えられがちですが、大企業であっても成功する確率は高くないと言われています。失敗の原因の一つと言われるアイデア発想段階における課題を見てみましょう。
課題① そもそもアイデアが出てこない
大企業には何かしらの成功体験があり、それに縛られ、新たな着眼点に立って考える、事業アイデアを発想することが難しくなってしまっていることがあります。
特に単一の事業で成功を収め成長してきた企業ほど、いろいろな人がアイデアを出しあっても似たようなものしか出てこない、斬新な事業アイデアを発想することができないなどの壁にぶつかりがちです。自分たちで発想することに限界を感じたら社外の世界を知っている外部の知見を借りることも選択肢の一つです。
課題② 技術からアイデアを考えてしまう
特に製造業に多く見られる現象ですが、アイデアを発想する拠り所が技術に偏ってしまうことがあります。
新規事業において自社の強みを活かすという点は間違いではありませんが、技術から考えてしまうと社会のニーズや、生活者の課題解決につながらないものになってしまう可能性があります。技術から考えるにしてもニーズも加味して考えることが重要です。
課題③ アイデアが出てきても採用の決定ができない
いろいろなアイデアが出てきても、どれを採用していいかわからない、決定できないという課題もあります。
そもそも似通ったアイデアしか出てこない場合は選びようがありませんが、加えて、アイデアを検討するメンバーが多く、意見が飛び交い、どのアイデアを採用すべきか議論がまとまらないことも多いのです。
このような場合には、経験のある外部の人間にファシリテーションを依頼し会議をサポートしてもらうのもよいでしょう。
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大企業で成功した新規事業のアイデア・実例
新規事業を考えるときにはまず成功実例や失敗実例を参考にすることです。
世の中には大企業でも、多くの障壁を乗り越えて「変化」や「イノベーション」を起こした事業がたくさんあります。そこからヒントを探ってみましょう。
実例① 日立製作所
日立製作所は2016年にIoTプラットフォーム「Lumada」をリリースしました。
このサービスはIoTにより生まれる社会の膨大なデータを活用して、経営課題の解決に役立てるためのプラットフォームです。
また「Lumada」のサービスはマーケティング戦略を立てる上でも有効で、様々な企業がDX推進に活用しています。いまやIoTプラットフォームにおける重要な地位を確立しています。
実例② 富士フィルム
富士フィルムは元々写真フィルムの企業でしたが、写真のデジタル化に伴いフィルムの需要が激減し、業態転換をせざるをえない状況に直面します。
そこで、生まれた新しい事業が化粧品の開発・製造です。富士フィルムは、長年蓄積してきたフィルム製造における素材の粒子を細かくする技術があります。その技術を応用して、肌に浸透しやすい化粧品の開発をしました。自社の技術をまったく違う分野に応用することで、新規事業を生み出すことに成功しました。
実例③ 日本郵政とYper
続いて紹介するのは、日本郵政とYperがはじめた不在時受け取りサービス「OKIPPA」です。
「OKIPPA」は、置き配バッグを自宅の玄関前に設置して、専用アプリで配送状況を管理するといういたってシンプルなサービスです。ですが、「OKIPPA」の出現は単身世帯を中心に再配達率が物流を圧迫している状況を軽減、また在宅時間が少ない顧客ニーズを満たす画期的サービスとなりました。
アプリを開発したYper社と日本郵便との提携で「OKIPPA」という大きく飛躍する事業が生まれました。大企業が自社だけで事業を創ることにこだわらず、事業開発をおこなった好例といえるでしょう。
大企業で失敗した新規事業のアイデア・実例
ここ数年、大企業においても新規事業進出は増えています。
資金や人材が潤沢にあるはずの大企業ですから、新規事業もスムーズにいくのは当然と思われがちですが、そうでもありません。
大企業においても、あの著名な企業が失態しているというケースはあります。ここでその失敗例を見てみましょう。
実例① セブンイレブン
コンビニ界の王者といわれるセブンイレブンにも失敗はあります。それは、生ビールサーバーを店舗に置き、ちょい<生>という生ビール販売を新商品として発売することでした。
しかし、販売は想定を上回る反響のため、需要拡大に対応する販売体制・品質保持が担保できないと、本部が中止を判断したのです。需要は十分あるのにそれを商品化できない、リスクヘッジができないということでしょう。
また、手軽に酒が飲めるという点で飲酒運転を懸念した行政への配慮もあったといわれています。
実例② ユニクロ
ヒット商品連発のユニクロにも失敗はあります。
ユニクロは2002年に野菜通販サービスを始めました。しかし、今までの衣料品販売とは違い、この事業はスタート時点から躓きます。企画製造販売を一気通貫でやってきたユニクロのビジネスモデルは、野菜通販では生きなかったのです。野菜の安定供給・在庫管理という不慣れな部分を担保できませんでした。
衣料の成功体験が正確な判断の邪魔になってしまったのかもしれません。2年で約28億円の赤字を出し、撤退を余儀なくされました。
大企業で成功した新規事業の共通点
大企業における新規事業の成功例、失敗例をいくつか見てみました。次に、成功している新規事業における共通点を考えてみましょう。
ポイント① ターゲットが明確に設定されている
新規事業の成功には、ターゲットを明確に設定することが欠かせません。
どんな人のどんな困りごとを解決する商品・サービスなのか、具体的なペルソナを設定してターゲットとする人の細部までイメージすることで、ニーズを見極めます。
ポイント② 時代のトレンドに乗った事業であるか
市場のニーズを掴むことは非常に大切です。その事業が時代の流れに即したものであるか、検討します。
今現在(2023年4月現在)そのアイデアが時代の流れに即しているかを見る場合、例えばポストコロナ禍の生活やAIの活用といったことからの影響(経済効果を含む)など、幅広くアンテナを張り世の中の動きを掴む習慣が求められます。
ポイント③ 新しいアイデアにこだわりすぎない
まったく新しいアイデアを生み出すということは、そう簡単なことではありません。せっかく思いついたアイデアがすでに競合他社のサービスが存在することもあるでしょう。
しかし、他社が展開しているサービスに弱みがあり、それを自社が補うことができるのであれば、新規事業として成功する可能性があります。大企業には資本力があります。他社のサービスを上回るサービスを展開することができるのかを考えてみましょう。
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新規事業のアイデア発想を補うフレームワーク
新規事業のアイデアを考えるときに、頼りになるのがフレームワークの活用です。
あてもなく、ただひたすら考えてもいいアイデアは浮かんできません。いろいろな要素を組み合わせて、発想を豊かにする手段がフレームワークです。ここでは発想に役立ついくつかのフレームワークを説明しましょう。
マンダラート
マンダラートは、9マス×9マスの81マスのマス目を使ってアイデアを展開していくフレームワークです。
はじめに真ん中のマスにメインテーマを記載し、その周辺8マスに連想するサブテーマを記載します。そして、サブテーマから連想することを周辺の8マスに記載する形で、メインテーマを要素分解し、発想を広げていきます。
マトリクス法
マトリクス法は、変数から発想を広げていくフレームワークです。
まず、「ターゲット」「機能」「シーン」「心理」「行動」などいくつかの変数を洗い出し、その中から2つを選び、表の縦軸と横軸にそれぞれの変数を設定します。例えば、表の縦軸を「ターゲット」と設定した場合、「高校生、主婦、独身男性」などと書き込んでいき、表の横軸を「行動」と設定したら「起床、お出かけ、食事」などと書き込み、表の交わるところにアイデアを整理していきます。
スキャンパー法
スキャンパー法は、アイデアに対して以下の7つの方向性から考えてみることで、別の新しいアイデアを生み出すことができないかを思考するためのフレームワークです。
- Substitute(代用する):他の方法やものに置き換えられないか?
- Combine(組み合わせる):アイデアを組み合わせられないか?
- Adapt(適応させる):他のものを適応、応用できないか?
- Modify(修正する):修正や変更を加えて、新しい価値が生まれないか?
- Put to other uses(他の使い道):別の使い道はないか?
- Eliminate(削減する):何かを取り除くことで、新しい価値が生まれないか?
- Reverse/Rearrange(逆転/再編成する):要素を逆転・組み換えたら、新しい価値が生まれないか?
新規事業のアイデア発想を社外で補う方法も
自社内でアイデア出しをしてもなかなかいいものが出てこない、無駄に時間ばかりが過ぎていく、チーム内で諦めムードが出始めている、そんな時は社外に協力を求めるのも一つの選択肢です。いくつかの選択肢をご紹介します。
選択肢① ワークショップに参加する
最近では、自治体、企業、そして大学などが主催するワークショップが増えています。
そもそもワークショップはその名が示すように「作業場」「仕事場」の意味を含み、参加者の主体性を重視した体験型の研究会や学習会がおこなわれています。ビジネス分野なら「発想したアイデアをビジネスに仕上げる」「商品・サービスの売り方の検討」などといったことを具体的に学び習得できます。社内研修の一環としても有効な手段です。
選択肢② セミナーに参加する
セミナーでは特定の分野・領域の専門家から知識・ノウハウを学ぶことができます。
一方通行ではありますが、質疑応答により関心のあるテーマについての知識、苦心している課題のソリューションなどを自社に持ち帰り活用することも有効な手段です。
選択肢③ コンサルタントの活用
アイデア出しの課題に直面したとき、その分野・領域に経験と知識のあるコンサルタントにコンサルティングを受けることも選択肢の一つです。
彼らは数多くの企業へのコンサルティング経験から「アイデア出し→ブラッシュアップ→新規事業創出」のノウハウの蓄積があります。そうした彼らの知見を借りることで、新規事業の成功、事業メンバーの能力アップも期待できます。
まとめ
新規事業をはじめるにあたってアイデアの良し悪しはその事業の命運を左右します。
新規事業でもっとも難しい課題が「アイデア出し」といわれています。社会ニーズの激しい変化、目まぐるしく変わる業界環境のなかにあって新規事業のアイデアが浮かばないのでは先に進むことができません。
企業は、情報のアンテナを広げ、あらゆるチャンスを求め、調査・検討、商品開発の努力が求められます。本記事でお話しした内容は必ずしも、新規事業のアイデア発想・事業創出の全てを語るものではありません。まだ深くそして詳しく知りたい、と思われましたら、お気軽にご相談ください。