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新規事業の立ち上げは、多くの企業にとって避けては通れない難題です。
成功させるためには、事業の必要性の理解と、新規事業の立ち上げのプロセスをしっかりと踏むことが大事です。
本記事では、新規事業の定義から、必要な立ち上げまでのプロセス、事業成功のポイント、失敗の共通点までを詳しく解説します。
新規事業を成功させるためのヒントや、他社事例を交えて新規事業を理解したい方は参考にしてください。
新規事業とは?
新規事業とは、企業が新たに立ち上げる事業や新規に展開する事業をいいます。
例えば、その企業がこれまで手がけていなかった分野に新たに参入することや、既にいくつかのビジネスにおいて収益化に成功している企業がさらに事業拡大のために新しく始める事業です。
独立起業して新たに始める事業なども「新規事業」に定義されることがあります。
新規事業の必要性
企業にとって新規事業が必要な理由は、いま行っている事業に加えて別の収益源をつくることで会社存続の確率を高めるためです。
特に近年のように変化のスピードが速くなった現代では、いま収益を得られている事業でも、この先どうなるかわかりません。
なぜなら、商品やサービスにはプロダクト・ライフスタイルといわれる成長周期があり、いま売れている商品、サービスもいつかは衰退するときが必ずやってくるからです。
新規事業の立ち上げプロセス
新規事業を立ち上げて軌道に乗せるためには、きちんとプロセスを踏む必要があります。
ここでは、新規事業のプロセスについてご説明します。
ステップ1 担当者を決める
新規事業を始めるにあたり、まず決めなければならないことは、「新規事業に携わる担当者を決める」ことです。
新規事業を立ち上げ、それを推進する中心人物と言ったほうがわかりやすいかもしれません。
この中心人物の選定、任命にあたっては、日頃の勤務ぶりから適所適材で決定する方法もありますが、最近では社内で新規事業のアイデアを募り、コンテスト形式で審査し、選ばれたアイデアの提案者をそのまま担当者に据える方法が主流になりつつあります。
この方法は、多種多様なアイデアが集まること、提案者がそのまま担当者になることで高いモチュベーションで事業を遂行してくれるというメリットがあります。
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ステップ2 事業に対する理念・ビジョンを明確にする
次に、事業の理念とビジョンを明確にします。
事業を新たに始めるにあたって「なぜ、この事業を当社がやるのか」というしっかりした軸を持つことです。
たんに市場や顧客のニーズに応えるだけではなく、自社がやる理由を明確にして関係者に共有することが大事です。
既存の企業理念やビジョンと照らし合わせながら、軸となる新規事業の理念やビジョンを決めていきます。
ステップ3 市場調査によるニーズの検討
次のステップは事業内容を考える上で欠かせない市場調査とニーズの検討です。
市場にどのようなニーズが存在しているか、またどんな競合他社がいるのか、参入障壁となる障害があるのかなど、徹底的にデータを収集し、調査・分析することが求められます。
調査には、ユーザーなどへのアンケート、インタビューなども含まれ、特にインタビューでは活発な意見交換、議論をすることで、顧客自身が自覚していない潜在的なニーズを掘り起こせる可能性があります。
ステップ4 事業モデルの検討
次に、市場のニーズに合わせて事業モデルをどのようにするかを考えます。
企業として取り組む以上は、マネタイズ(収益化)が必要になります。
どんなに優れたアイデアで市場のニーズを満たせたとしても、収益性がなければ事業として継続できません。
どのようにすれば事業として採算がとれるか、持続的に事業を行っていけるかビジネスモデルを考えます。
ステップ5 事業計画に落とし込む
事業モデルが決定したら、事業を実行するための事業計画を作成します。
事業計画は、売上、コスト、利益など収益面の計画や、誰が何を担当するかなどの人員計画、またいつまでに何をするかというスケジュールなど、事業を実行する上で必要なすべてを盛り込み、組み立てていきます。
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新規事業成功のポイント
新規事業は多くの企業が取り組むものの、事業を成功させることは簡単ではありません。
新規事業を成功させるために意識するべきポイントを紹介します。
ポイント1 過去の成功体験に囚われない
新規事業を始めるときには、過去の経験、とりわけ成功体験に囚われないことが大切です。
過去のことは考えないくらいがいいかもしれません。
これまで成功してきた技術や知識は貴社にとってかけがえのないものかもしれませんが、これから始める事業が同じやり方で成功するとは限らないからです。
新規事業は事業内容はもちろん、メンバーや競合など環境が異なります。
「前回はこのやり方で上手くできたから」という考えに固執しないことが重要になります。
特にリーダーは自分の成功体験に判断基準にしてしまいがちです。
「以前までと今回は違うかもしれない」そう考えながら思考をアップデートさせることが必要です。
ポイント2 市場の成長性や成熟度を認識する
新規事業を始めるにあたっては、成長性のある市場に参入することが大事です。
そうすることで成功確率を上げることができます。また、これと並行して、すでにそこにいる競合他社の分析も欠かせません。
競合を分析することで競合にはない自社の強みを認識し、そこに経営資源を投入していくことが成功への近道になります。
ポイント3 意思決定はスピード感をもって
新規事業において意思決定のスピードは重要です。
特に成長市場では、慎重さが命取りになることがあります。
慎重になりすぎるあまり競合他社に先を越されてしまうことは避けなければいけません。
可能であれば、意思決定者の人数は絞ってスピード感が失われないようにしましょう。
失敗した時のリカバリーにもスピードは重要です。
ポイント4 顧客に受け入れられる仕組みづくり
新規事業で扱う商品がどんなに素晴らしいものであっても売れなければ事業は持続できません。
そのためには売れる仕組み、顧客が購入しやすい仕組みの構築が必要です。
マーケティング手法を最大限に活用し、商品・サービスが売れる仕組みを作っていきましょう。
新規事業失敗の共通点
残念ながら、私たちは新規事業が失敗に終わるケースを多く見ています。
その原因はいくつかあるのですが、ここでは失敗の共通点について説明します。
多いのが以下の5つになります。
- モチベーションが維持できない
- タイミングを外す
- 事前準備不足
- 経験不足
- 資金難
以下で一つひとつみていきましょう。
1.モチベーションが維持できない
新規事業は、参入した市場で認知度を高め、市場の反応を見ながら改良を重ねていくことで軌道に乗せることができます。
しかし、そのための時間を多く要するケースが多く見られます。
なかなか結果が出ないと、取り組むメンバーの気持ちが萎えてしまい、事業に対するモチベーションの低下を引き起こしてします。
これを避けるために、例えば小さな目標を設定して達成感をメンバーで共有してみるなど、モチベーションを持続する取り組みも必要です。
2.スピード感がなく参入のタイミングを外す
これはスピード感とリスク管理、そして体制構築に関わる課題でもあります。
せっかく素晴らしいアイデアが浮かんだとしても、スタートするまでに時間がかかり、競合他社に先を越されてしまうということが多々あります。
リスク管理や体制の構築も重要ですが、スピード感も重要です。
競合他社も生き残りをかけて参入していることを認識しましょう。
参入する時期を明確にし、必ず期限を設けてリスク管理・体制構築をしていきましょう。
3.事前準備不足
スムーズに事業を運ぶためには事前準備が重要ですが、準備不足のために思わぬトラブルに遭遇し事業が行き詰ってしまうことが少なくありません。
スピード感をもって進めることと、時間の許す限り十分な事前準備を行うこと、この背反する問題をクリアすることが成功への近道になります。
4.経験不足
新規事業は、新しい分野に参入するわけですから、今までの経験則が通用しないケースが多々あります。
事前準備をしっかりやっても、この問題はクリアできない場合もあります。
この経験不足を補う方法として、参入する業界と人的・物的な繋がりのある企業との提携や、業界に知見のあるプロ人材やコンサルタントに相談することも有効です。
5.資金難
新規事業につきものなのが資金難=資金不足です。
新規事業は短期間に収益が望めないケースが少なくありません。
そこで重要になるのが資金計画です。
ターゲットとすべき顧客がいてニーズが確かにあるのであれば、事業がスムーズに進まないケースを想定したうえでの資金計画を立てておき、できれば資金調達先も確保したスタートが必要でしょう。
実例
1 幅広い年齢層をターゲットに新規商品を開発;シーラック株式会社
静岡県焼津市のシーラック株式会社は、同市で水揚げされた鰹を使った鰹節を中心に、製造から販売までワンストップで対応している水産加工メーカーです。
同社は贈答品に高い比重を置いた事業を中心に展開していましたが、昨今の消費の落ち込みを課題として、自社の強みを活かした新商品「バリ勝男クン」を開発。
鰹節を生姜醤油で味付けした鰹節チップに仕上げ、スナック菓子として酒のつまみとして子供から大人まで幅広いファンを獲得。
順調に売上を伸ばすことに成功しました。
県内でのテレビCMも功を奏し、知名度も一気にアップし、大ヒット商品になりました。
2 写真フィルムの技術を使って化粧品開発:富士フィルム
富士フィルムはその名が示す通り、写真フィルムのメーカーとして日本のリーディングカンパニーでした。
ところが写真フィルムマーケットの縮小に直面、この苦境の打開策を自社の持つリソースを活用した業態変換に臨みます。
そこで様々な試行錯誤を経て化粧品を開発し、写真フィルムとは全く異なるマーケットに参入します。
同社が持つ素材の粒子を細かくする技術は、化粧品製造にも転用でき、その技術の蓄積が同社にはありました。
この挑戦は既存の経営資源である技術的な価値を見つめなおし、その技術を化粧品に転用することで新事業・新商品開発に結びつけて成功した代表例といえるでしょう。
3 物流と決済サービスを活かし、家電修理サービス:ヤマト運輸
家電が修理を必要とした場合、普通、販売店やメーカーに直接問い合わせます。
そのとき自ら梱包・発送といった時間と手間が発生することに目をつけたヤマト運輸は、「サービスが先、利益は後」という社是の下、サービスの質と向上を目指し、その結果生まれたのが「クロネコ家電Dr.修理サービス」です。
家電が故障したら、ヤマト運輸に連絡すれば、回収・修理・返却というサービスをワンストップで受けられます。
取扱品目はパソコンやデジタルカメラに限られていますが、ヤマト運輸には「パソコン宅急便というサービスもあり、既存のリソースの活用という側面からもリスクの少ない事業といえます。
これはヤマト運輸が持つ「フットワークの良さ」が存分に発揮された好例といえるでしょう。
まとめ
新規事業を立ち上げ、成功させるためには、目的を明確化させそれを達成させるためのプロセスを一つひとつ踏んでいかなければなりません。
立ち上げの意思決定から事前準備に至るまで、その作業は多岐に渡ります。
本文の中でも触れましたが、新規事業での問題点のなかに経験不足が挙げられます。
新たに事業をはじめるのだから経験不足は当然ですが、この経験不足を解消できれば、新規事業の船出そして航行は確かなものになります。
ヒト・モノ・カネを考えた時、必ずヒトが先に考えられるのはそのためです。
当社のサービスはまさにこのヒトがやるべきことを使命とし、貴社新規事業の成功をサポートさせていただきます。