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マーケティングの基本的な概念として「マーケットイン」と「プロダクトアウト」があります。
この二つはよく比較の対象として語られることが多い用語です。
本稿では、改めて「マーケットイン」と「プロダクアウト」の違いや、それぞれのメリットや効果について説明していきます。
マーケットイン・プロダクトアウトの違いとは?
まずは前提として、マーケットインとプロダクトアウトの違いを明確にしていきます。
マーケットインとは?
マーケットインは、消費者の声や意見といったニーズを起点に企業が製品・サービスの開発を行い、顕在的なニーズを満たすことを目指すマーケティング手法です。
高度経済成長以降の「良いものをつくれば売れる」というやり方は通用しなくなり、消費者の情報感度が高くなりました。
趣味や興味も多様化する現在の市場では、「いま消費者が何を求めているか」というニーズやウォンツを探り、それを商品開発に活かすマーケットインが有効であるという傾向が強まっています。
プロダクトアウトとは?
プロダクトアウトは、企業が良いと判断した商品を市場に展開することをいいます。
顧客のニーズを満たす商品を市場に展開するマーケットインとは対極にあります。
プロダクトアウトは企業の強みや特徴に沿った商品開発をすることから、他社と差別化をした商品が生まれやすい特徴がありますが、その一方で顧客のニーズに受け入れられないケースも出てきます。
マーケットイン・プロダクトアウトの比較
前述したように「マーケットイン」と「プロダクトアウト」には、製品開発の方向性や考え方に大きな違いがあります。
市場にモノが溢れ、競合企業もたくさん存在する現在では、顧客の声に耳を傾け、そのニーズにあった商品・サービスを開発するマーケットインの考え方が主流となりつつあります。
しかし、だからといってプロダクトアウトよりマーケットインが優れているというわけではありません。
例えば、AppleのiPhoneのような大ヒットにつながっている商品はプロダクトアウトで開発されたものが多くあります。
このような商品は消費者の頭の中にない新しいものであるため、消費者にいくらヒアリングしても出てこないでしょう。
このように「マーケットイン」と「プロダクトアウト」は、どちらが優れているというものではなく、いずれにもメリットがあります。
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マーケットインのメリット
「マーケットイン」は、顧客の立場に寄り添いながら、市場が必要とするモノを提供していく姿勢をさします。
言い換えれば、市場のニーズを調査したうえで、これに沿った製品を開発・提供していこうという考え方です。
これを念頭にメリットを説明します。
メリット① 顧客ニーズに満たす製品を提供できる
ターゲットとする顧客ニーズを事前に念入りに調査するため、顧客が実際に必要とするモノが把握でき、自社製品の開発・提供に反映できます。
これにより、自社に対する顧客の期待度・信頼度の向上が期待できるだけでなく、自社製品を再び購入したいと思ってくれるリピーターを獲得できる可能性もあります。
メリット② 売上予測が立てやすい
市場ニーズを把握したうえで製品の開発・提供を行うため、売上を予測しやすいというメリットがあります。
製品の開発段階から、ある程度の売上予測が立てられることから、事業計画や売上計画を立てやすくなります。
また、ターゲットとなる顧客層も市場調査の結果にもとづいているため、マーケティング計画も考えやすくなります。
メリット③ 開発目標を設定しやすい
顧客が求めるモノが、そのまま製品開発の目標となることが多く、場合によっては、具体的な数値目標を設定できることもあります。
具体例として、顧客が求めるモノが「低価格のノートパソコンだったケースを想定」すると、「どの程度の金額で販売すれば顧客に納得してもらえるか」「その価格で顧客が求める機能をどう盛り込むか」などを調査し、これを開発目標に掲げることで、開発をスムーズ進めることが可能になります。
マーケットインの実例
では、以降で顧客ニーズを掴んだ製品化・サービス化としてのマーケットインの実例を紹介しましょう。
マーケットインの実例①:アサヒ飲料「ワンダ・モーニングショット」
アサヒ飲料は、ビジネスマンが朝仕事をする前に缶コーヒーを求めていることを市場調査でつかみました。
そこで、朝専用の缶コーヒーとして「ワンダ・モーニングショット」を販売したところ、発売して10年以上たった現在においても仕事前のビジネスマンに親しまれ、朝の缶コーヒーの地位を守り続けています。
発売当時、サラリーマンの朝に注目した競合他社はなく、完全にブルーオーシャンでした。
さらに、所ジョージさんや仲間由紀恵さんを起用したCMも功を奏し、朝にはモーニングショットを飲むといったブランドイメージを定着させることもできました。
マーケットインの実例②:ライザップ「顧客の結果にコミット」
ダイエットや肉体改造に取り組む人にとっては継続することが大きな課題でした。
そこでライザップは結果にコミットすることを打ち出し、ユーザーのニーズを満足させることに成功したのです。
さらに、ライザップではジムだけでなく英会話やゴルフ教室などさまざまな事業を拡大しています。
そのいずれも、コンセプトは同じで、ユーザーの「3日坊主で終わってしまうかも」といった気持ちを「やりとげられる」といった気持ちに変えたのが特徴です。
プロダクトアウトのメリット
プロダクトアウトの考え方は、マーケットインの対極に位置し、企業や製造者側がつくりたいモノや、企業の方針に合致するモノなどを重視しながら製品の開発・提供を行うというものです。
そこには市場のニーズよりも売り手である企業側の考えに重きが置かれており、「つくり手が良いと思う製品を開発する」「良い製品であれば売れる」といった考え方がベースにあります。
では、そのメリットについて説明しましょう。
メリット① 自社の技術力や強みを発揮できる
プロダクトアウトの基本的な方針は、自社がつくりたい製品を開発・提供することです。
ここでいう「つくりたい製品」とは、例えば、自社独自のアイデア・技術・強みを活用して開発する製品です。
こうした方針のもとでは、他社に真似できない製品を開発できる可能性が高く、他社との差別化や自社製品のアピールなどにつなげられます。
また、場合によっては、「この製品といえば、この企業」という印象を顧客に与えることができ、自社のイメージ強化、ブランディング戦略としても効果的だといえます。
メリット② 大ヒット商品の開発が期待できる
プロダクトアウトでは、前例のない、いわばこれまで市場に存在しなかった製品の開発を企画することが可能です。
これまで市場に存在しなかった製品は売上予測を立てられないものの、もしも世の中の大勢の人に注目されて大評判ともなれば、爆発的な売上が得られる可能性がありますし、既存事業の殻を破ることも期待できます。
メリット③ 市場調査・新部門立ち上げなどのコストを削減できる
自社が持つ強み・技術などを製品・サービス開発に活用するため、市場調査にかかるコスト(これを手掛ける部門の立ち上げコストも含む)を相対的に軽減できる可能性があります。
また人的・金銭的・時間的なコストを軽減することができる分、貴重な経営資源の無駄使いを避けられます。
プロダクトアウトの実例
続いてプロダクトアウトの実例を紹介します。
プロダクトアウトの実例①:日清食品「カップヌードル」
「日清カップヌードル」は販売してからほぼ半世紀がたちますが、現在に至っても売り上げを伸ばし続けており、同社の「チキンラーメン」や「どん兵衛」など定番の宝庫といわれる企業においても特別な存在です。
カップヌードルは、他社製品が時代に合わせてさまざまな味を出すなか、発売当時から味やパッケージデザインをほとんど変えていません。
日清食品は時代のニーズに合わせるよりも、定番をつくることを重要視しているということがここに見て取れます。
結果的に「カップラーメン=日清カップヌードル」というブランド化に成功しました。
プロダクトアウトの実例②ソニー「ウォークマン」
ソニーではポータブルの音楽再生機能がほとんどない時期から、1979年にカセットタイプの「ウォークマン」、さらに1984年にはCDタイプの「ウォークマン」を販売しました。
音楽を再生することができるものを小型化して持ち運べるようにしたことにより、幅広いユーザーを獲得する結果となりました。
そこには大ヒット要因としてのソニーの持つ高い技術が挙げられます。
このようにウォークマンは「自社の技術力=強み」が発揮されたプロダクトアウトの好例になりました。
まとめ
マーケットインとプロダクトアウトは、良し悪しに関係なく、ともに大切な考え方で、最も重要なのは「結果的に、競合他社ではなく自社製品・サービスが顧客に選ばれること」を意識し目標とすることです。
これを実現できるならば、マーケットイン、プロダクトアウトのいずれを採用してもあまり大きな問題にはなりません。
言い換えれば「自社製品を顧客に選んでもらうために、どのようにして差別化を図るか」という視点がマーケットイン・プロダクトアウトの導入成功の鍵になります。
マーケットインでいくか、プロダクトアウトでいくかは、その採用判断は企業や開発する商品・サービスにより違ってきます。
その際、有効なアドバイスは外部の専門家に頼るということもご検討ください。
会社規模や事業内容によってはスタッフも増え、予算規模も大きくなります。
どうしても自分たちだけでは判断できないということも起こりえます。
そんな時には、私たちにご相談ください。
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「選ばれる商品・サービスのために」を掲げ、マーケットイン、プロダクトアウトのいずれかに縛られず、商品開発を行うことが大切です。