GX(グリーントランスフォーメーション)とは? 注目される理由と企業が取組むメリット・事例を紹介

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GX(グリーントランスフォーメーション)とは、持続可能な未来を築くための新たなビジネスアプローチです。

この記事ではGXが注目される理由を解説し、企業がなぜこれに取り組むべきか、そしてその取り組みから得られるメリットと実際の事例をご紹介します。

持続可能性への道を歩む企業にとってGXがどれほど重要か、その魅力を詳しく探ってみましょう。

GX(グリーントランスフォーメーション)とは?

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「GX」は「グリーントランスフォーメーション(GreenTransformation)」の略語であり、温室効果ガス排出削減を経済成長の機会と捉え、産業競争力向上や社会変革に繋げる活動です。

経済産業省では、GXについて「2050年のカーボンニュートラルや、2030年温室効果ガス排出削減目標を成長の機会と捉え、産業競争力向上に向けた経済社会システム全体の変革」と定義しています。

脱炭素とカーボンニュートラルは共にGXの要素であり、脱炭素はCO2排出ゼロを目指し、カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出量と吸収量を相殺し、実質的な排出ゼロを目指します。

GXはこれらの要素を組み合わせ、持続可能な未来への道を切り拓く取り組みです。

GXが注目されている背景

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持続可能な未来を築くための新たな取り組みであるGXが注目されている背景として、次の3つがあります。

地球温暖化など環境問題のリスクレベルが向上

2023年の夏は、日本を含め世界中で異常気象が観測されました。

気象庁などの分析によると、フィリピン海東方での対流活動の活発化、記録的に強まった太平洋高気圧、北上する台風の増加、フェーン現象、エルニーニョ現象発生率の上昇などが影響し、日本においては観測史上最も暑い夏となりました。

こうした異常気象は世界的・恒常的な地球温暖化の影響であると分析されており、水不足や火災の発生などの災害につながる恐れも大きく、人々の健康と生活に多大な影響を与える可能性が高まっています。

こういった観点から地球温暖化と気候変動が世界的な課題として浮上し、GXにおける脱炭素、カーボンニュートラルなどの取り組みが急務となっているのです。

政府が提唱しており予算がついてきている

GXに対する政府予算については、次のような情報があります。

 

・GX関連の2024年度政府予算

政府は2024年度予算の概算要求で、脱炭素に向けたGX分野に2兆円超を要求すると発表しました。

・GX関連製品に対する集中支援

蓄電池や半導体、水素関連装置などGX実現に欠かせない製品の国内生産を集中支援するために予算を充てる予定とされています。

・GX関連投資を促す仕組み

複数年度にわたって予算を使えるようにして民間投資を促す仕組みを導入します。

・再生可能エネルギーの拡大と脱炭素化

GX推進法が2023年5月に成立し、20兆円規模の「GX経済移行債」の発行と合わせて、官民合計で今後10年間・150兆円超を投じて、再生可能エネルギーの拡大や企業の脱炭素化を進めるとしています。

GX関連の政府予算は、地球温暖化の防止と我が国の経済成長の両立を目指すものです。

しかし具体的な事業内容や効果についてはまだ不明確な点も多くあり、今後分野別の投資戦略策定や予算執行の進捗に注目が集まっています。

国際社会のカーボンニュートラルへの転換

GXの広がりは世界的な動向となっています。

現在多くの国や地域が2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げており、日本も2020年10月にこの目標を宣言しました。

GXの達成には、国際社会においても官民一体の取り組みが必要です。

達成には省エネ技術や再生可能エネルギー等の活用が必要ですが、これを推進するためには、政府主導により官民一体となった取り組みが必要です。

そのため、各国や地域の行政機関がカーボンニュートラルなどGX関連の実現目標を公に掲げているのです。

また目標設定だけではなく、それを達成するための取り組みを後押しする公的補助等の拡充も図られています。

企業に求められているGXへの取り組み

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GXは、脱炭素社会を目指す取り組みを通じて経済社会システムを変革し、持続可能な成長を促進するアプローチです。

これに関連し、企業に求められる3つの取り組みについて見てみましょう。

温室効果ガスの排出量削減

企業は2050年におけるカーボンニュートラル実現に向けて2030年の排出量削減目標を掲げ、この目標達成のために戦略を練ることが必要です。

また任意目標として「日本政府が表明している貢献目標(2030年46%削減)より高い排出量削減目標を設ける」ことが推奨されています。

サプライチェーン全体への働きかけ

GXにおいて、サプライチェーン(供給連鎖)全体へのアプローチは極めて重要です。

企業は供給連鎖の上流に位置する自身の活動だけでなく、下流に位置するサプライヤーや取引先、さらには一般消費者に対しても環境への影響を考慮し、持続可能性に対する意識を醸成させることが必要です。

なぜなら、GXは国際社会に生きる我々個人が意識し実践しなければ達成できない取り組みだからです。

このサプライチェーンに対する働きかけの具体例として、自社製品やサービスにCO2排出量を表示するというものがあります。

GX市場の創出・拡大

GX市場は急速に成長しています。

企業は自ら革新的なイノベーションを起こして環境への負荷を低減し、社会的責任を果たすために脱炭素を推進し、再生可能エネルギー、環境に配慮した製品・サービスなど(カーボン・オフセット)を市場に投入する取り組みを行っています。

この分野の成長は新たなビジネス機会を提供するとともに、投資家や消費者の関心を引き出します。

企業は持続可能なビジネスモデルの普及を推進し、環境への貢献を果たすことで、GX市場(グリーン市場)の発展に貢献し、新たな市場機会を創出し拡大させる役割も担っているのです。

 

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企業がGXを推進する3つのメリット

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企業がGXを推進して得られるメリットには、主に次の3つがあります。

エネルギーコストを削減できる

GXに取り組むことによって、企業は省エネや再生可能エネルギーを活用することになり、エネルギーコストを効果的に削減できます。

省エネ技術を導入することで、企業活動における消費エネルギーを減少させ、それによってエネルギー料金の経費削減が期待できます。

また再生可能エネルギーの活用により、従来の化石燃料に依存しない、環境に負担をかけないエネルギー源が利用可能になります。

そのため二酸化炭素の排出を削減するとともに、エネルギーの安定した長期的供給が実現します。

これらエネルギーコストの削減により、経営効率と収益性、さらに競争力が増大し、これによって企業の持続可能な成長に寄与します。

このためGXを導入することは企業にとって有効な戦略であり、長期的なビジネス成功へとつながります。

ブランディングの向上につながる

GXへの取り組みは、企業のブランディング向上に大いに寄与します。

その企業の環境問題への積極的な関与や持続可能性へのコミットメントは、企業の社会的責任感や先進性をアピールできるからです。

これにより取引先や消費者からの信頼と評価を高め、ポジティブなイメージを構築できます。

またGXに取り組む企業は、優れた人材の確保と育成にも優位性を持ちます。

環境に配慮し社会的貢献を重視する企業文化は、優秀なプロフェッショナルや才能ある若手にとって魅力的だからです。

これらの優秀な人材により、企業は高度な専門知識と創造性を発揮し、成長とイノベーションを促進します。

公的予算の増加が見込まれる

今後、GXに関連する公的予算の増加が期待されます。

日本政府はGXへの官民総投資額を150兆円超と予測しており、これに伴いGX関連の補助金や助成金も増加・拡充の見通しです。

公的予算の増加は、企業投資やイノベーション、さらには新たなビジネス機会の創出にもつながります。

積極的にGX関連のプロジェクトに参加することで、企業は市場におけるイニシアティブを握り、その存在感が高まることによって、さらなる増収増益を創出していくことができます。

企業がGXに取り組む際に活用できる2つの補助金

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企業がGXに取り組む際に活用できる補助金には「ものづくり補助金(グリーン枠)」及び「事業再構築補助金(グリーン成長枠)」の2つがあります。

ものづくり補助金(グリーン枠)

「ものづくり補助金(グリーン枠)」は環境負荷を軽減する製品やプロセスを開発するための支援制度であり、環境省が実施しています。

具体的には、省エネルギー技術や再生可能エネルギー技術を利用した製品製造、またそれらを利用するプロセスの開発に取り組む企業が対象となります。

補助金は最大で2,000万円まで支給され、補助率は最大で3分の2です。

補助金の申請には事前審査があり、プロジェクトの内容や計画書の提出が必要です。

ものづくり補助金(グリーン枠)を活用することで、企業は環境に配慮した製品開発への取り組みと市場拡大を図ることができ、ひいては増収増益と成長に繋げることができます。

事業再構築補助金(グリーン成長枠)

「事業再構築補助金(グリーン成長枠)」は中小企業の事業転換・再生を支援するための補助金制度で、経済産業省が実施しています。

「グリーン成長枠」部門では、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決に資する取り組みを行う中小企業等が対象となります。

例えば省エネルギー施設建設や再生可能エネルギーの導入、環境負荷を低減するための設備投資や製品開発などです。

補助金の支給額は最大で1億5,000万円で、補助率は最大で3分の2です。

申請には一定の条件が必要です。

  • 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  • 付加価値額を向上させること
  • 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
  • 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

上記のように規定されています。

企業の取り組み事例

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GXを達成するため、企業には自社がGXに取り組む意義や手段を検討し直し、積極的に進めようとする姿勢が求められます。以下に企業の取り組み事例をご紹介します。

Appleの事例

・再生可能エネルギーの活用

Appleは自社のオペレーションにおいて100%再生可能なエネルギーを使用しています。

・製品の持続可能性

Appleは製品のデザインから廃棄物の管理まで、持続可能性を重視しています。

・環境への影響の最小化

Appleは製品の製造過程において、環境への影響を最小限に抑えるために化学物質の使用を削減し、廃棄物の処理方法を改善するなどの努力をしています。

・サプライチェーンの改善

Appleはサプライチェーン(供給連鎖)においてもGXを推進しており、サプライヤーに環境基準の遵守を求めています。

・環境への貢献

Appleは環境への貢献を重要視する観点から、植林プロジェクトや再生可能エネルギー開発プロジェクトに投資し、森林保護やエネルギーのクリーン化に貢献しています。

ユニ・チャームの事例

・GHG排出量可視化プロジェクトの推進

ユニ・チャームは、GXへの具体的な取り組みの一環として、日本最大級のプロフェッショナルグループであるデロイト トーマツと協力して包括的なGHG(温室効果ガス)排出量可視化プロジェクトを開始しています。

このプロジェクトの目標は、製品ごとのGHG排出量を明らかにし、透明性を高めることです。

・CO2排出量の削減

ユニ・チャームは、製品の原材料調達から製造、廃棄までのバリューチェーン全体でCO2排出量の削減に取り組んでいます。

また2030年までに、事業展開に使用するすべての電力について再生可能電力への切り替えを目指して推進しています。

・環境配慮型商品の開発

ユニ・チャームは「環境配慮型商品の開発」として、使用済み紙おむつのリサイクル事業化に取り組んでいます。

2022年6月には、鹿児島県内の一部の介護施設において、リサイクル材を使用した大人用紙おむつ『ライフリー』のテスト使用を開始しています。

GXにおけるビジネスチャンス

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エネルギーや素材、製造業等における業界変革が期待されており、多くの場合では新規事業者の参入というよりは既存の事業者がいかに素早く新たな潮流に乗れるかという点がビジネスチャンスになると思われます。

しかしながら、新技術の開発が必要であり、投資も積極的にされることが期待されるため、大学発の化学・エネルギーベンチャーやGXを管理するITやGXへの投融資などもチャンスが多いにあると考えられます。

以下に具体的なビジネスチャンスの例を挙げていきます。

・エネルギー

蓄電池:全個体電池の本格実用化、関連素材の確保・投資、エネルギーグリッド構築・管理、リサイクル

再エネ:洋上風力発電

水素・アンモニア:貯蔵・装置・車輛・船舶など活用機材およびサプライチェーンの構築、低コスト製造技術の確立

・製造

CCUS関連:CO2分離・回収装置、カーボンリサイクル、CO2回収型コンクリート・セメント、バイオマス燃料

金属:CO2排出が産業部門の5割を占める鉄鋼業における生産プロセス技術の確立

化学品:

移動用機器(自動車・船舶・航空機):CASEを支えるIT技術、EV、充電インフラ、V2H、航空機用SAFインフラ、水素・アンモニアを活用したゼロエミッション船舶

住宅・建築物:ZEH・ZEB、V2Hなどの省エネ・電力化、建設材料の省CO2化

食料・農林水産:水田・家畜のメタン・N2O排出削減、農林水産業の機械における脱原油

・その他

金融:上記の各種プロジェクトを遂行するための投融資

IT:各種業界におけるCN管理基盤やサプライチェーン管理

まとめ

脱炭素とカーボンニュートラルを通じた企業のGXへの取り組みは、自社の利益追求のみならず、持続可能な世界を構築する上で極めて重要です。

この重要性の認識は世界的動向であり、多くの国が政府主導の下、官民一体となって取り組んでいます。

このなかで企業は、自社ブランディングや優れた人材の確保によって市場での存在感を示すとともに、省エネや再生可能エネルギーの新技術開発、これらを用いたプロセスの開発と導入、サプライチェーンへのアプローチ等によって、持続可能な世界の構築を目指し、GXを牽引していく重要な役割を担っているのです。

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執筆者紹介

中村 基樹

アクセンチュアに25年在籍後創業、主にハイテク製造業、通信、不動産、自治体のお客様の経営課題解決に尽力。新規事業・成長戦略、デジタル・IoT戦略、営業改革、SCM・調達改革、IT戦略・構築、業務・ITアウトソーシングなど、数多くのコンサルティングサービスを提供。

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