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現在、次世代通信規格である6Gを支える通信基盤となるIOWN構想が注目を集めています。
IOWNは、なぜ世界的に注目されているのでしょうか?
この記事ではIOWN構想について詳しく説明し、普及が進むことでどのようなことが可能になるのか、なぜ注目度が高いのか解説していきます。
IOWNとは?
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)とは、NTT(日本電信電話株式会社)が提唱している次世代の通信・ネットワーク基盤となる概念で、IOWN構想とも呼ばれます。
2030年頃の実現を目標に研究開発が進められており、あらゆる電子デバイスを光に置き換えることで高効率かつ高速に伝送することを目指しています。
また、IOWNと5Gや6G等の通信規格は密接な関係にあります。
現時点の日本では、5Gが扱えるデータ量や通信速度に対応するインフラが整っておらず、5Gの規格を我々は十全に扱えているわけではありません。
IOWNは光電融合技術を用いてインフラを整える構想であり、普及が進むことで次世代通信規格の6Gにも対応し、日本のICTにイノベーションを起こすといわれています。
IOWNの目的・メリット
IOWNの目的は、ICTリソースの最適化によって持続可能な社会の実現と我々の生活の豊かさを両立することです。
IOWNが普及することで、以下の3つのメリットがあります。
- 通信の高速大容量化
- 情報の高解像度化
- 省エネルギー化
通信の高速大容量化
我々が扱うデータ量は年々増加しており、既存のインフラでは近い将来に限界を迎えるといわれています。
この背景には、インターネット上での動画コンテンツの視聴が一般的になったことや、クラウドベースのサービスやアプリケーションの利用の増加、さまざまなデバイスがネットワークに接続され、リアルタイムでデータを送受信するIoTの普及が関係しています。
IOWN構想では、次世代の通信規格がもつ性能を十全に発揮させることで、大容量データ社会への対応を目指しています。
情報の高解像度化
現在ネットワークから得られる情報は、ほとんどが視覚情報や聴覚情報です。
IOWNが普及すると情報の高解像度化が進み、今よりも多様な感覚情報を離れた場所から伝えられるようになります。
例えば専用のデバイスを用いて料理の味を伝えたり、繊細な触覚を共有することで手術などの精密な作業を遠隔で行ったりと、さまざまな技術が実現可能になります。
省エネルギー化
現在、ネットワーク接続デバイスの急増によって起こる電力消費の増加や、膨大なデータを扱うデータセンターの電力消費が課題となっています。
IOWN構想ではこの問題に対処するために、光電融合技術を用いて情報処理の電力効率を大幅に改善します。
爆発的に増大する情報量にも効率的に対応できる処理能力を発揮するため、エネルギーの無駄を減少させ、持続可能なネットワーク構築を実現します。
身近なものでは、スマートフォンやウェアラブル端末の充電をしなくても長期にわたって利用できるようになることが予想されています。
IOWNに用いられている技術
IOWN構想の実現に向けて、開発が進められている主な技術を紹介します。
コグニティブ・ファウンデーション
IOWN構想の中でコグニティブ・ファウンデーションは、ICTリソースを最適に制御し、必要な情報を調和的に流通させる役割を果たします。
具体的には、あらゆるICTリソースを収集することで、システムが自ら考え最適化と自己進化を行い、あらゆる課題を解決します。
例えば台風や災害などの緊急事態において、新たに収集される気象情報や状況の変化などの多様なデータを取り込み、システムが自ら最適化して対策を立案・実行します。
また無線アクセスの最適化を自動的に行うことで、常に安定したネットワークへの接続を可能にします。
これらの技術は、異なるレイヤーのリソースを最適統合する「マルチオーケストレータ」により、クラウドから端末までのICTリソースを一元的に統合し、オーバーレイソリューションを得ることで実現していく構想です。
デジタルツインコンピューティング
デジタルツインとは、人や物体をデジタル上に構築することを指します。
現実で立てた仮説を、仮想空間上で検証や予測するために用いられる技術です。
IOWNにおいてのデジタルツインコンピューティングでは、この概念を発展させ、多様な物体と人間のデジタルツインを組み合わせることで、都市を高精度に再現し、未来の予測を行うことを目指しています。
人の見た目だけでなく、内面のデジタル表現も重要視されており、生理学とニューラルネットワークを用いた機械学習を組みわせて、脳や体をデジタル化します。
さらには精神面の理解も目指し、感情の高精度な表現を実現することで、デジタル上により人間に近い存在を構築します。
オールフォトニクス・ネットワーク
オールフォトニクス・ネットワークは、フォトニクス(光ベースの技術)を全面的に活用することで、エレクトロニクス(電子ベースの技術)では難しかった高性能な通信を実現する技術です。
具体的には現在の通信と比較し、以下の3つの性能目標が掲げられています。
- 「電力効率を100倍に向上」
- 「通信の伝送容量を125倍に拡大」
- 「遅延を200分の1に削減」
また、これらの目標を実現するための基盤となる技術が「光電融合技術」です。
光電融合技術では、フォトニック結晶を用いて光を小さな領域に閉じ込めることで、これまで電子信号で行っていたチップ内の情報処理を光信号でも行うことで、低遅延、低消費電力の実現を目指します。
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IOWN構想に対する注目度
IOWN構想は、NTTが中心となって取り組む日本発の国際基準規格として、将来性が有望視されています。
歴史的に、日本発の国際標準規格として生み出されたものは失敗に終わったものも多く、それらは短い期間で淘汰されています。
しかしIOWN構想に関しては、競合関係にある国内外の通信企業が数多く参加しており、世界的にも注目されています。
また現在の日本は5G化の開発が遅れてしまったため、他国に大きくシェアを奪われている状況です。
そういった背景もあり、次世代の通信規格である6Gに対応するIOWN構想の注目度が高まっているのです。
さらにIOWN構想が実現されると、6Gの機能を十全に発揮でき、大容量データを用いるさまざまなコンテンツが活性化すると考えられています。
例えばVRや3Dコンテンツ、メタバースに取り組む企業が増えることで、新たなサービスが生まれ、ITやエンターテインメントの領域で大きな成長が見込まれるでしょう。
実際の開発・検証例
IOWN構想の実現に向けて、現在開発が進んでいる技術を紹介します。
Immersive Space Entertainment
「Immersive Space Entertainment」は、デバイスを身に着けずにVRコンテンツの体験を可能にする技術です。
VRコンテンツを通した「未来の体験」や「未来のメディア」のデザインから未来に必要な技術の開発につなげることが目標です。
ドーム型の部屋の中で360度の映像をナチュラルな動作で体験する「360 Movie」、音楽を可視化した「Music visualizer」、自転車型のトレーニング器具を使用した新しいエンターテインメント「Cyber gym」の3つのコンテンツを用意しています。
裸眼立体視装置
「裸眼立体視装置」は、立体的な映像を裸眼で楽しむことができるディスプレイ技術です。
かつての3Dテレビが、専用メガネのわずらわしさと映像制作のハードルから普及しなかったのに対し、裸眼立体視装置では専用メガネをつけずに、立体映像を楽しむことが可能です。
想定されている応用分野は、家庭用3D映像鑑賞だけでなく、ビジネスやエンターテインメント、医療など多岐にわたります。
視聴者の視点に応じて映像を調整することで、リアルかつ没入感のある映像体験を提供することが期待されています。
APN IOWN 1.0
「APN IOWN 1.0」は渋谷に開業された「Shibuya Sakura Stage」に研究以外で初めて導入されたIOWNです。
このIOWNはShibuya Sakura Stageと渋谷ソラスタを結んでいます。遅延速度は片道で100μs(マイクロ秒)、往復で200μsを実現しており、人間にはほとんど知覚できないほどのレイテンシーしかありません。
APN IOWN 1.0を用いたイベントでは、お笑い芸人たちがネットワーク上でじゃんけんや漫才を行い、ほとんど違和感なく離れた場所でのコミュニケーションを実現しました。
IOWN関連の事業をご検討の企業の方へ
IOWNは日本企業が国際的にリードしている技術分野であり、電気通信による速度や帯域の向上が頭打ちになった際に拡大が有望視される市場です。
NTTを筆頭に、大手企業が長年開発を行ってきているため、単独でここに参入するようなビジネスはなかなか難しいと思われますが、どのようにこの技術を活かせる可能性があるか、またこの市場の形成過程にどのように携わっていくかという観点で検討を行うことは可能です。
「TACHIAGE(タチアゲ)」には新規事業の検討に強い人材が多数在籍しています。技術自体の開発や応用が難しい場合でお、多様な角度からサポートで貴社の新規事業検討をサポートさせていただきます。