量子コンピューターとは?原理の解説と事業開発への活用方法

この記事は約7分で読めます。

この記事では量子コンピューターの原理の解説や事業開発への活用方法などを解説しています。

量子コンピューターの重要性やどういった分野で活用できるのか、気になる方はぜひご覧ください。

量子コンピューターとは?

量子コンピューターとは?

量子コンピューターとは量子力学の応用により誕生した、次世代のコンピューターのことをさします。

目に見えるマクロな現象を扱う古典的な力学と異なり、量子力学は目に見えない原子レベルのミクロな世界における事象の振る舞いを解明するためのものです。

量子コンピューターを理解するには、量子が持つ性質を理解することが欠かせません。

「重ね合わせ」や「量子もつれ」といった性質がその例です。

量子コンピューターの原理

量子コンピューターの原理

昨今、人工知能(AI)の活用により、分析などで膨大な計算処理が必要となっています。

こうした中、古典コンピューターでは現実的な時間内に処理することが難しいため、量子コンピューターによるさまざまな開発や研究が進められています。

古典コンピューターは基本単位を「ビット(bit)」とし、0又は1のいずれかの状態を表します。

同時に2つの状態を表現することはできません。

それに対し量子コンピューターは、基本単位を「量子ビット(qubit)」とし、重ね合わせと呼ばれる量子力学の性質を生かすことで、0と1の両方の状態を同時に表すことができます。

そのため、古典コンピューターでは時間内の処理ができない量子力学に基づく高次元の計算を、量子コンピューターを用いてできる可能性があります。

 

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量子コンピューターの種類

量子コンピューターの種類

量子コンピューターは、計算のアプローチ手法の違いによって分類できます。

大きく2つの方式「量子ゲート方式」「量子アニーリング方式」が注目されています。

さらに2つの方式で次の5つの方式(超伝導方式、シリコン方式、光方式、イオントラップ方式、冷却原子方式)に細分化されています。

超伝導方式

超伝導のメリットとして基礎技術が充実することと、ゲート操作が比較的安定することがあります。

課題としてノイズに弱いこと、大型極低温施設などが必要になること、動作する部品の小型高性能化、チップやモジュール間の連携など、大規模化に向けた技術の開発を進める必要があります。

シリコン方式

シリコンのメリットとして、超電導型より高温で量子ビットが動作するため大規模化しやすいこと、コヒーレンス時間が長くできることがあります。

また今後の課題として、集積した量子ビットを正確に制御する技術の確立が必要です。

光方式

光の最小単位である光子に情報を載せて、光回路を作ることで装置を大型化することなく、大規模な計算性能を容易に上げられます。

光子は外乱に強く室温や大気中でも壊れにくいため、量子の性質を保つことができます。

今後の課題として、量子ビットや計算を補助する光パルスを発生する光源の開発と、光回路を構成する部品の高性能化があげられる。

イオントラップ方式

量子情報の格納にイオントラップというイオンを捕獲する装置を利用した量子コンピューターで、イオン化された原子を空中に浮かせレーザーで操作します。

イオントラップ方式の長所は、コヒーレンス時間の長さが挙げられます。

イオン1つ1つを量子ビットとして利用し、イオンに電気の力を加えることで、宙に浮かせ重ね合わせ状態を長い間保つことができます。

冷凍機は不要で、常温でも使えます。

イオンの操作にはレーザー技術を用いますが、多数のレーザー機器を必要とする上、その技術の難易度が高いため、技術の確立が必要であることが課題です。

冷却原子方式

冷却原子方式は、原子を冷却して量子的な振る舞いを示すようにすることで量子ビットを実現し、情報処理を行う量子コンピューターの方式をいいます。

冷却原子方式では、レーザー光や磁場などの手段を用いて原子の運動エネルギーを減少させ、低温の状態に近づけます。

それにより量子ビットの品質を均一にすることができ、コヒーレンス時間を長くすることができます。

光ピンセットによって大規模化しやすく、量子ビットを全結合させることもできます。

ただし今後の課題として、2つの量子ビットゲートのフィデリティー(忠実度)向上があげられます。

量子コンピューターの活用が期待される分野・領域

量子コンピューターの活用が期待される分野・領域

量子コンピューターの応用が期待されています。

化学、流通・物流、金融・ヘルスケア、製造の5分野で期待され、その領域は、化学分野のシミュレーション、業界別シナリオのシミュレーション、最適解の抽出、AI(人工知能)や機械学習などが代表的な領域となっています。

これらが、業種によって異なる形で適用されます。

そのうち製造、金融、物流の3分野について以下より解説します。

製造業

注目される領域の1つに、製造に関する分野での量子コンピューターがあります。

素材メーカーや製薬会社などで、分子状態を詳細かつ高速にモデル化して計算機上でのシミュレーションが可能になることで、製品開発サイクルが劇的に短縮されます。

素材開発のための化学分野のシミュレーションに量子コンピューターを活用すると、素材開発のプロセスそのものが変わります。

金融

金融では、量子コンピューターにより数日かかっていた計算が数時間に短縮されれば、利益を拡大できるようになります。

これまでも金融派生商品の価格設定や投資リスク分析などに、コンピューターが利用されてきました。大規模なシミュレーションに関しても、量子コンピューターによって短時間でより精密な計算が可能になれば、古典的コンピューターより少ないステップで最適解を得られるようになります。

物流

物流においても、量子コンピューターを利用して配送ルートを最適化させ、莫大な組み合わせの中からの最適解を抽出するといったことも効果が見込まれます。

 

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量子コンピュータで事業を起こす際に直面する課題

量子コンピュータで事業を起こす際に直面する課題

従来のコンピュータの限界を超えるとして期待されている量子コンピュータですが、事業化して成功するためには課題がまだまだ多くあります。

実際に量子コンピュータの技術を用いて事業を起こす際にどのような問題に直面するか、それぞれ2つの観点から解説します。

知識/人材が不足

量子コンピュータを取り扱う企業の経営における上層部の経歴を見た時に、最低限に修士号以上の学位を皆が保持し、さらにコンピュータサイエンスの博士号を保持している人も多数在籍しています。

このことから、量子コンピュータで起業するにはファウンダー自身の量子技術、量子力学に対する理解が必要不可欠で、それらの分野に関して優れた経歴を持つ研究者やエンジニアを集める必要があると考えられます。

ソフトウェア開発の課題

量子コンピュータ技術を活用したソフトウェア開発の課題として、線形代数の習得、量子力学に対する理解、量子情報論に関する理解したエンジニアが必要になることが考えられます。

セキュリティ面の課題では、量子コンピュータのクラウドサービスを提供する会社が日本国外に存在し、そのサービスを利用することで日本国内でもソフトウェアのシミュレーションなどを実行できます。

しかし国外のサービスに頼りすぎることで、自国の重要な情報が国外に漏洩してしまう可能性が考えられます。

それを防ぐため、自国で完結できる仕組みを考える必要があります。

まとめ

量子コンピューターについて詳しく解説しました。

量子コンピューターはさまざまな分野で利用されていますが、ソフトウェア開発の課題や、量子コンピューターを利用できる人材が不足しているなどの問題があります。

通常のコンピューターでは解決できないような莫大な情報を読み込んで、解決をするなど必要となるケースが多くあります。

しかしエンジニア不足など、それ以外の部分でも多くの問題があります。

今後さらに量子コンピューターを活用するために、それぞれの課題を解決していく必要があるのです。

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執筆者紹介

河上 祐毅

ムーンプライド 取締役

アクセンチュアの戦略グループで通信・メーカー・メディア企業を中心に支援、クライアントチームへ転部を経て10年間在籍の後にマクドナルドにてプロモーション効果分析や消費者調査を担当。ムーンプライドではヘルスケア・通信・ハイテクメーカーを中心にDX営業、新規事業立ち上げ、デジタルマーケティング領域で支援を実施。

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